著者
板谷 喜朗 佐野 薫 金城 昌克 緒方 さつき 小笠原 敬三
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.862-866, 2010-08-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
12

われわれは診断までに時間を要した合成樹脂製玩具誤飲による腸閉塞症の1例を経験した.症例は1歳7か月の男児.頻回の嘔吐を主訴に当院を受診し,第3病日に発熱,下痢が出現し小児科に入院となった.入院後は下痢が消失し腹部膨満が増強した.第4病日の腹部単純X線写真で著明な小腸拡張像を認め,第5病日に施行した腹部CTで消化管異物による腸閉塞症と診断し緊急手術を行った.回腸内に異物を認め,これを摘出した.異物は直径25mmの弾性のある軟らかい球形玩具で,素材は合成樹脂TPE(thermoplastic elastomer)であった.なお,家族は患児が異物誤飲していたことに全く気付いていなかった.術前認めていた高熱は術後速やかに消失した.乳幼児の玩具誤飲は救急外来でしばしば経験されるが,腸閉塞症をきたし手術に至る症例はまれである.また乳幼児は自らの訴えを表出できず,誤飲する現場が確認されていない場合は診断の遅れにつながる.
著者
長久 吉雄 吉田 泰夫 伊藤 雅 小笠原 敬三
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.1054-1058, 2009 (Released:2009-10-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1

Humoral hypercalcemia of malignancy(以下,HHM)をきたしたParathyroid Hormone Related Protein(以下,PTHrP)産生胃癌の1例を経験したので報告する.症例は82歳の女性で,2007年2月に食欲不振を主訴に来院した.精査にて胃噴門部癌と診断されたが,入院時検査で高Ca血症を認めたため,内分泌学的血液検査を追加施行したところintact PTH・高感度PTHがそれぞれ低下し,血清PTHrPは上昇していた.以上から,PTHrP産生胃癌によるHHMと診断した.可及的な高Ca血症の改善を図った後,脾合併胃全摘術,膵体尾部切除術を施行した.術後,血清CaおよびPTHrPは基準範囲内に低下し経口摂取も可能となった.しかし,術後17日目より血清Caは上昇へ転じ,PTHrPは67.8pmol/lにまで増加した.転移病巣が出現・増大し,術後38日目に死亡した.HHMを来した胃癌の予後は極めて厳しく,またPTHrPが胃癌の予後指標因子のひとつとなりうる可能性が推測された.