著者
伊藤 雅浩 佐川 雄二 大西 昇
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HI,ヒューマンインタフェース研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.87-92, 1996-02-29
参考文献数
11

入力単語をその出現順序にしたがって逐次処理を行なうオンライン言語処理モデルにおける、自己修復(言い直し)文の解析手法を提案する。対話をオンラインに処理することは、処理効率や認知学的見地から見ても有効であるが、自己修復のように話者自身が直前の発話を翻す発話を行なっている場合に問題が生ずる。本手法では名詞句、格、動詞句を扱う3つのバッファを用意し、それら3つの相互作用によって解釈を進める。そして、それぞれのバッファ独自の方法で自己修復をオンラインに検出し訂正する。試行的にインプリメントした結果、コーパス中の自己修復文の約80%について自己修復を正しく検出、訂正した。
著者
井森 萌子 常川 祐史 片岡 沙耶 伊藤 雅隆 大屋 藍子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.23-32, 2021-01-31 (Released:2021-05-18)
参考文献数
14

本研究は、先延ばし傾向のある大学生を対象に、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)が先延ばしに与える影響について、先延ばしの心理指標と行動指標の両側面から検討することを目的とした。対象者47名を60分のACTのプログラムを行う実験群、プログラムは行わない統制群に振り分けた後、先延ばしの行動指標として、7日間の課題達成率、先延ばしの心理指標として先延ばしを測定する質問紙への回答をプログラムの前後に求めた。同時に、ACTのプロセス指標であるFFMQとAAQ-IIも測定した。四つの指標の変化を分析した結果、実験群では課題達成率、先延ばし尺度がともに改善されたが、ACTのプロセス指標は変わらなかった。ACTに基づくプログラムが心理面、行動面ともに先延ばしの改善に効果的である一方、効果のメカニズムについては検討していく必要があることが示唆された。
著者
矢後 勝也 平井 規央 小沢 英之 佐々木 公隆 谷尾 崇 伊藤 勇人 遠藤 秀紀 中村 康弘 永幡 嘉之 水落 渚 関根 雅史 神宮 周作 久壽米木 大五郎 伊藤 雅男 清水 聡司 川口 誠 境 良朗 山本 以智人 松木 崇司
出版者
公益財団法人 自然保護助成基金
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.233-246, 2020-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
11

シカの急増に伴う林床植生の食害により国内で最も絶滅が危惧されるチョウと化したツシマウラボシシジミの保全を目的として,a)保全エリアでの実践的な保護増殖活動,b)保全エリア候補地の探索に関する活動,c)希少種保全と農林業との連携に関する活動,の大きく3つの課題に取り組んだ.保護増殖活動では,環境整備やシカ防護柵の増設により保全エリアの改善を試みた他,現状の環境を把握するためにエリア内の林床植生および日照・温度・湿度を調査した.今後の系統保存と再導入のために越冬・非越冬幼虫を制御する光周性に関する実験も行った結果,1齢幼虫から日長を感知する個体が現れることが判明した.保全エリア候補地の探索では,本種の好む環境を備える椎茸のホダ場30ヶ所を調査し,良好な環境を保持した11ヶ所のホダ場を見出した.保全と農林業との連携では,アンケート調査から多くの地権者や椎茸農家の方々は本種の保全に好意的なことや,本種を育むホダ場で生産された椎茸のブランド化に賛成で,協力可能であることなども明らかとなった.
著者
本 秀紀 愛敬 浩二 森 英樹 小澤 隆一 植松 健一 村田 尚紀 木下 智史 中里見 博 小林 武 上脇 博之 奥野 恒久 近藤 真 植村 勝慶 倉持 孝司 小松 浩 岡田 章宏 足立 英郎 塚田 哲之 大河内 美紀 岡本 篤尚 前原 清隆 中富 公一 彼谷 環 清田 雄治 丹羽 徹 伊藤 雅康 高橋 利安 川畑 博昭
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

比較憲法研究・憲法理論研究を通じて、(1)先進諸国が「ポスト・デモクラシー」という問題状況の中でさまざまな問題を抱えていること、(2)各国の政治状況・憲法制度の差異等が原因となって、その問題の現れ方には多様性があること、の2点が確認された。そして、「ポスト・デモクラシー」の状況の下で国内・国際の両面で進行する「格差社会」化の問題は、今日の憲法制度・憲法理論において有力な地位を占める「法的立憲主義Liberal Democracy」の考え方では、適切・正当な対応をすることが困難であることを明らかにした。以上の検討を踏まえて、民主主義をシリアスに受け止める憲法理論の構築の必要性が確認された一方、「政治的公共圏」論を抽象論としてではなく、(日本を含めた)実証的な比較憲法研究との関連において、その意義と問題点を検討するための理論的条件を整備した。
著者
安宅 弘司 伊藤 雅文 柴田 高
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.125, no.12, pp.937-950, 2005-12-01 (Released:2005-12-01)
参考文献数
50
被引用文献数
3 5

Wood creosote, the principal ingredient in Seirogan, has a long history as a known gastrointestinal microbicidal agent. When administered orally, the intraluminal concentration of wood creosote is not sufficiently high to achieve this microbicidal effect. Through further animal tests, we have shown that antimotility and antisecretory actions are the principal antidiarrheal effects of wood creosote. Wood creosote inhibits intestinal secretion induced by enterotoxins by blocking the Cl- channel on the intestinal epithelium. Wood creosote also decreases intestinal motility accelerated by mechanical, chemical, or electrical stimulus by the inhibition of the Ca2+ influx into the smooth muscle cells. In this overview, the antimotility and antisecretory effects of wood creosote are compared with those of loperamide. Wood creosote was observed to inhibit stimulated colonic motility, but not normal jejunal motility. Loperamide inhibits normal jejunal motility, but not stimulated colonic motility. Both wood creosote and loperamide inhibit intestinal secretion accelerated by acetylcholine. Wood creosote was found to have greater antisecretory effects in the colon than loperamide. Based upon these findings, we conclude that the antidiarrheal effects of wood creosote are due to both antisecretory activity in the intestine and antimotility in the colon, but not due to the microbicidal activity as previously thought. Wood creosote was found to have no effects on normal intestinal activity. These conclusions are supported by the results of a recent clinical study comparing wood creosote and loperamide, which concluded that wood creosote was more efficacious in relieving abdominal pain and comparable to loperamide in relieving diarrhea.
著者
伊藤 雅道 田神 一美
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.81-83, 1993-01-25 (Released:2009-06-12)
参考文献数
1
被引用文献数
3

茨城県つくば市、筑波大学構内の屋外プールにある水道水出口にプランクトンネットを設置し、50~100トンの水道水を流下させた後、残さ物中の生物相を調べた。この中には線虫類、輪虫類、ソコミジンコ類などが見られたほか、クマムシ類もかなりの個体数が見出された。得られたクマムシは1種類であったが、分類学的検討の結果、イボヤマクマムシ属(lsohypsibius)に属する新種であることが判明し、ここに記載を行った。本種Isohypsibius hydrogogianus sp.n.(和名:スイドウクマムシ)は、第1脚~第3脚の内爪の下側に明瞭なcuticular barが存在することで他種と区別することができる。なお、水道水から見出された淡水性クマムシの記録は今回が世界で初めてと思われる。
著者
清水 純子 伊藤 明子 山本 洋子 伊藤 雅章 本間 香 橋本 明彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.114, no.7, pp.1277-1282, 2004-06-20 (Released:2014-12-13)

1993~2002年の10年間に新潟大学医学部附属病院皮膚科で組織学的に扁平苔癬と診断し,経過を観察した症例のうち,薬剤性を除く78症例を集計した.合併疾患,C型肝炎ウイルスとの関連,金属試薬貼布試験結果や歯科金属除去の有効性を検討した.抗HCV抗体陽性率は15.4%(78例中12例)で高い傾向がみられた.口腔内病変を有する症例は64例であった.そのうち,貼布試験を施行した症例は40例で,何らかの金属試薬に陽性を示した症例は55.0%(40例中22例),さらに,歯科修復物に陽性金属含有が確認された症例数は15例,歯科金属除去有効率は77.8%(9例中7例)であった.その他,粘膜疹に接している部位の金属修復物を除去した後に粘膜疹が改善した症例が6例あり,歯科金属が非アレルギーの機序で関与する可能性も考えられた.以上より,扁平苔癬の原因ないし増悪因子として,歯科金属による接触アレルギーないし局所刺激性が重要と考えた.
著者
伊藤 雅弘 中山 浩太郎 原 隆浩 西尾 章治郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.48, no.20, pp.39-49, 2007-12-15
被引用文献数
2

近年,知識処理の有用なコーパスとして,ユーザ同士が協調してコンテンツを編集するWeb事典である「Wikipedia」に多大な注目が集まっている.筆者らはこれまでの研究において,Wikipediaに対してリンク構造を解析することで精度の良いシソーラス辞書が構築できることを示してきた.しかし,膨大な記事数を持つWikipediaを解析するためには,高い精度を保ったままスケーラビリティのさらなる向上が技術的な課題であった.そこで,本研究ではリンクの共起性解析に着目し,スケーラビリティの高いシソーラス辞書構築手法を提案する.提案手法の性能評価のために行った実験の結果,共起性解析を用いた手法は従来手法よりも少ない計算時間で,高精度なシソーラス辞書を構築できることを確認した.さらに,共起性解析とtfidfを融合させることによって,より高い精度が実現できることを確認した.Wikipedia, a huge scale Web based encyclopedia, attracts great attention as a valuable corpus for knowledge extraction. We have already proved how effective it is to construct a Web thesaurus. However, we still need high scalability methods to analyze the huge amount of Web pages and hyper links among articles in the encyclopedias. In this paper, we propose a scalable Web thesaurus construction method from Wikipedia by using link co-occurrence. Experimental results show that the proposed method based on link co-occurrence analysis was better on scalability and accuracy than previous methods. Moreover, the method combining tfidf with link co-occurrence analysis brought higher precision.
著者
伊藤 雅典 斉藤 文彦
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.377-384, 2011-03-25 (Released:2011-08-25)
参考文献数
12

近年における情報化社会の発展により,個人認証の機会および必要性が増加しつつある.特に,パスワードや鍵のように盗用や忘失の恐れがなく偽造が困難といった点から,身体的特徴を用いたバイオメトリクス認証が注目されている.そこで,本稿では身体的特徴として唇から得られる唇画像を利用した個人認証システムを提案する.従来の研究では,口の動きなどの行動的特徴を使用する認証が研究されているが,本研究では静止した自然状態の唇画像を用いることにより,より利便性,簡易性のある認証を提案する.また,本システムではカメラからの画像入力を行うため,非接触なセンシング方法で心理的な抵抗感が少ないという利点がある.本研究の目的としては,カメラによって撮影された唇画像が個人認証に耐えうる身体的特徴を有しているか否かを調査し,個人認証システムとして試作することによって本研究の有効性を示す.
著者
山本 洋子 橋本 明彦 冨樫 きょう子 高塚 純子 伊藤 明子 志村 英樹 伊藤 雅章
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.821-826, 2001-04-20 (Released:2014-12-27)
被引用文献数
1

掌蹠膿疱症における歯性病巣治療の有効性を調べるために,新潟大学医学部附属病院皮膚科で掌蹠膿疱症と診断した60症例について検討した.本学歯学部附属病院第二補綴科で歯性病巣を検索したところ,54例に慢性根尖病巣または慢性辺縁性歯周炎を認め,歯科治療を開始した.皮疹の経過観察を行い,「治癒」,「著明改善」,「改善」,「軽度改善」,「不変」,「悪化」の6群に分類し,「改善」以上の皮疹の軽快を認めた症例を有効群とした.口腔内アレルゲン金属除去ないし扁桃摘出術を行った症例を除いた31例について,歯性病巣治療の有効性を検討した.有効率は,歯性病巣治療終了群では70.6%,歯性病巣治療途中群では57.1%,両者を合わせた「歯性病巣治療群」では64.5%であり,無治療群の14.3%に比べて有意に有効率が高かった.有効群では歯性病巣治療開始後比較的早期に治療効果を認めること,罹病期間が長期でも治療効果が速やかに現れる症例があることより,歯性病巣は掌蹠膿疱症の主要な発症因子の1つであると考えた.本症では,従来のような扁桃炎などの耳鼻咽候科的な感染病巣および歯科金属アレルギーの検索とともに,自覚症状の有無に関わらず歯性病巣の検索も行い,個々の患者ごとに適切な治療方針を決定することが重要である.
著者
伊藤 雅光
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.112-129, 2008-01

小稿の目的はフロッピー版『古典対照語い表』を資料にして,語彙の量的構造史モデルを提案することにある。見出し語の使用頻度と時代的使用範囲を基準にした量的語彙構造分析法により,上代,中古,中世の各時代の語彙構造の二次元モデルと,それをさらに抽象化した語彙構造の一次元モデルとを構築する。各レベルの共時態を時系列順に並べることにより,各レベルごとに語彙の量的構造史が構築されることになる。それにより,語彙の量的構造史自体が抽象レベルの違いによる多層構造になると解釈した。
著者
岩原 文彦 伊藤 雅充 浅見 俊雄
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.499-511, 2003-10-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
36
被引用文献数
1 3

The purpose of this study was to examine the effect of active recovery between two strenuous anaerobic exercises separated by a short time interval. Eight healthy adult male volunteers (age: 24.8±1.8 yrs, height: 170.6±2.5 cm, weight : 70.1 ±2.5 kg) underwent five exercise sessions. Each session consisted of a warm-up, the first anaerobic exercise test (40 sec of exhaustive cycle ergometer exercise), a 30 min inactive (seated) or active recovery period, and a second anaerobic exercise test. During the active recovery period, subjects executed one of four different intensity pedaling tests (60, 80, 100, 120% of predetermined lactate threshold intensity) for 10 min. There were no significant differences in mean power and peak blood lactate concentration among sessions during the first anaerobic exercise test. Significant differences were found in the blood lactate concentration among sessions during the second anaerobic exercise test, and significant differences were found in mean power for the second anaerobic exercise. Optimal intensity related to the blood lactate removal rate was 83.3±7.1%LT, and that related to the working capacity recovery rate was 68.3±11.8%LT.From these results, concerning blood lactate removal rate, it was suggested that between 80%LT and 100%LT was an effective intensity. As for performance, the effective intensity was less than 100%LT.
著者
伊藤 雅 林田 巧
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.124, no.7, pp.1396-1403, 2004 (Released:2004-10-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

This paper presents an optimization method for guitar fingering. The fingering is to determine a unique combination of string, fret and finger corresponding to the note. The method aims to generate the best fingering pattern for guitar robots rather than beginners. Furthermore, it can be applied to any musical score on single notes. A fingering action can be decomposed into three motions, that is, a motion of press string, release string and move fretting hand. The cost for moving the hand is estimated on the basis of Manhattan distance which is the sum of distances along fret and string directions. The objective is to minimize the total fingering costs, subject to fret, string and finger constraints. As a sequence of notes on the score forms a line on time series, the optimization for guitar fingering can be resolved into a multistage decision problem. Dynamic programming is exceedingly effective to solve such a problem. A level concept is introduced into rendering states so as to make multiple DP solutions lead a unique one among the DP backward processes. For example, if two fingerings have the same value of cost at different states on a stage, then the low position would be taken precedence over the high position, and the index finger would be over the middle finger.
著者
伊藤 雅隆 武藤 崇 Masataka Ito Takashi Muto
出版者
心理臨床科学編集委員会
雑誌
心理臨床科学 = Doshisha Clinical Psychology : therapy and research (ISSN:21864934)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.83-94, 2015-12-15

本稿の目的は,過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)に対しての認知・行動療法(CBT:Cognitive Behavior Therapy)について展望を行うことであった。有病率が約11%とされるIBSは機能性の消化器障害で,患者の多くがうつ病や不安症などを併発している。薬物療法で軽快しない事例などに,心理療法が適用され,その中でもCBTがその有効性を示している。IBSに対するCBTプログラムについて4種類に分類した。(a)認知療法を用いたもの,(b)ストレスマネジメントを中心にしたもの,(c)腸症状への不安を中心にしたもの,(d)マインドフルネスを用いたものに分類され,それぞれの特徴が示された。今後の課題として,併発症状やQOL改善を見据えた治療プログラムが必要であること,IBS の心理面の基礎的な研究が少ないこと,本邦での治療研究が必要であることが指摘された。