著者
相馬 美咲 石川 奈緒 吉田 直登 成田 翔 笹本 誠 嶝野 英子 東山 由美 伊藤 歩 海田 輝之
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.83-90, 2019-05-31 (Released:2019-05-31)
参考文献数
13
被引用文献数
1

近年,1年に700トン以上に及ぶ,多くの動物用抗菌性物質が販売,使用されている。投与された抗菌性物質の一部は糞尿中に排出されている。そのため,その抗菌性物質を含んだ排せつ物を堆肥などに再利用することで薬剤耐性菌の発生および水域環境に抗菌性物質が拡散する可能性が懸念されている。しかしながら,家畜に投与した抗菌性物質がどのくらい排せつ物として体外に排出されるのか報告例は少ない。そのため本研究では,スルファモノメトキシン(SMM)を対象物質として,牛のモデル動物であるめん羊にSMMを投与し,体外への排出率を求めた。その目的のために,まずめん羊の排せつ物中のSMM分析法を検討した。固相抽出やMcIlvaine緩衝液での抽出処理を用い,尿および糞試料で85.9%および93.2%と安定して高い回収率を得ることができるSMM分析法を構築した。その後,2頭のめん羊を用いてSMM投与試験を行った。その結果,SMMの最大濃度は,SMM投与から16 時間後に糞で45.6 mg/kg, 2時間後に尿で532 mg/kgを示した。投与したSMMは排せつ物として平均して尿から10.6%,糞から2.0%,全体で12.6%が体外に排出された。