- 著者
-
吉田 研作
- 出版者
- 日本コミュニケーション障害学会
- 雑誌
- コミュニケーション障害学 (ISSN:13478451)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.1, pp.25-29, 2003-04-30
- 参考文献数
- 7
235人の中高生を対象に,「帰国子女」のアイデンティティ形成にみられる要因を調査した.その結果,滞在年数や友達の数,そして言語能力が影響していることが明らかになった.しかし,言語能力といっても外国語と日本語では,話す,聞く,読む,書くの4技能やコミュニケーション能力の影響はそれぞれ異なっていた.外国語の場合は,4技能の中でも特に聞き取りと話す能力,すなわち相手の話を理解し,自分の意図を正しく伝えるというコミュニケーション能力の重要性が示された.日本語の場合は,特に読み書き能力が日本人としてのアイデンティティと高い相関を示した.また,2つのアイデンティティ(外国人として,日本人として)とその差との観点から「帰国子女」が自分のアイデンティティを考えるとき,外国人度の判断より日本人度の判断に関して個人差がみられ,その背景に潜む彼らの心の葛藤を示唆している点も注目すべきであると考えられた.