著者
安達 拓 吉野 克樹 北目 茂 猪飼 哲夫 林 雅彦 後藤 慎一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D3P2522, 2009 (Released:2009-04-25)

【はじめに】呼吸筋機能は腹部臓器を初め身体各臓器重量の作用方向の影響を受け、これが体位による換気メカニクスの違いとなる.我々はこうした体位による呼吸筋メカニクスの違いを利用して呼吸リハビリに応用する方策を検討しているが、今回主要吸気筋である横隔膜の体位を利用したトレーニング法を検討するため頭低位における横隔膜機能を調べた.【原理】横隔膜筋力強化法として従来吸気回路に粘性抵抗を負荷する方法や腹壁に砂嚢などの重し袋を載せて呼吸するいわゆるabdominal pad法がある.一方腹腔内臓器重量は横隔膜筋力に対して、立位では補助的に作用し横隔膜収縮力を軽減するが、仰臥位では拮抗的に作用し横隔膜にとっては負荷となり、頭低位では腹部重量が横隔膜に対して腹壁に載せた砂嚢と同様の働きをする.【方法】本研究に同意が得られた健常成人を対象として、ティルトテーブルを利用し臥位(0°)より各10°間隔でー30°まで頭低位姿勢をとり各角度で測定した.測定パラメーターは、ニューモタコメーターによる一回換気量・気流量.また胸部および腹部に装着したインダクタンスプレスチモグラフ(レスピトレース)による胸・腹壁の動きからrib-cage volume.(Vrc)abdominal volume(Vab)Chest wall volume(Vcw)を測定しiso volume法にて補正後、Konno-Meadダイアグラムでchest wall configurationを解析した.胃・食道バルーン法により食道内圧Pesと腹腔内圧Pgaを測定し経横隔膜筋力Pdi(=Pga―Pes)を計測した.比較対象として仰臥位でabdominal pad法(0kg~2kg)行い同パラメータを検討した.【結果】頭低位では換気運動においてVrcに対してVabの寄与度の割合が多くなり、FRCの低下が認められた.換気量に対する横隔膜出力(ΔPdi/ΔV)は-10°以下で増大した.同様にabdominal pad法ではΔPdi/ΔVは砂嚢1.0~1.5kg重量から増加した.【結論】臨床的にabdominal pad法で用いられる1.0kg加重による横隔膜負荷は頭低位-10°~-20°で達成され、この程度の頭低位姿勢では自覚症状は見られず呼吸を維持できた.頭低位姿勢を利用した横隔膜トレーニング法の可能性が示された.