著者
大村 潤平 Han Peng 吉野 千恵 服部 克巳 下 道國 小西 敏春
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

地震に関係する電磁気現象のうち電離層で発生する電子密度の異常について、地圏で発生する地震と電離層で起こる現象を結びつける理論として、地圏-大気圏-電離圏結合(LAIカップリング)理論が提唱されている。千葉大学の服部グループでは、大気電場、大気イオン濃度、ラドン濃度等の大気電気パラメータを観測することによってLAIカップリングモデルのうち化学チャンネルの可能性を観測学的に検証している。本稿では、千葉県旭市に設置した旭観測点の大気電気パラメータ変動の特徴について報告する。旭観測点(北緯35.77度、東経140.69度、以降ASA)では大気電気学的パラメータとして大気イオン濃度、大気電場、大気ラドン濃度、地中ラドン散逸量、気象要素の観測を行っている。本稿ではASAの大気電気パラメータの降雨応答、季節変化、日変化等について調査した結果について、従来の清澄観測点(KYS)の結果(大気イオン濃度と大気電場変動)と比較を行った。大気イオン濃度と大気電場について降水前の変動は普遍的で、大気イオン濃度は降水開始時に急に増加し、大気電場は降水開始3時間前から乱れる傾向が確認されたが、終了後変動にはサイト毎に異なる傾向が見られ、ASAではKYSに比べどちらのパラメータも高い値を示す時間帯があり、通常時のレベルに戻るのに時間がかかる傾向が見られた。季節毎の平均日変化にも地域差がみられ、ASAの夏季の日変化は15時頃に最小値をとるパターンであり、ASAの他の季節やKYSで確認された15時に最大値をとるパターンとは異なる傾向となった。大気電場については、冬季には9時から12時にかけて低下し、その後徐々に増加を続けるような日変化を示した。それ以外の季節では朝8時頃にピークを迎える変動幅の大きな日変化を確認した。この内冬季の日変化はKYS観測点で全期間のデータから得られた典型的日変化と概ね結果となった。ASAの観測結果からラドン散逸量は気圧の変動に対して3時間の遅れをもつ逆相関があることが確認できた。また季節によって日変化パターンが異なることも確認された。ラドン散逸量の変動に対し、大気イオン濃度、大気電場は少し遅れて相関のある変動を示す傾向が確認された。地震に関連するラドン異常変動を抽出するためには、観測点を増加することと今後の詳細な解析に基づくモデル化が必要である。