著者
松嶋 登 吉野 直人
出版者
神戸大学大学院経営学研究科
雑誌
神戸大学経営学研究科 Discussion paper
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012-11

本論文の目的は、技術研究がハードコアとして共有する理論前提の再検討から、技術研究におけるレリバントな研究実践のあり方を問い直すことである。技術研究はこれまで、技術と組織の関係構造を解明すべく、一方で組織の安定性を前提とし、他方で組織の変化の原因として技術固有の特性を求めてきた。しかしながらその議論は、技術固有の物質的特性(materialism)と人々の解釈柔軟性(agency)を巡る「論点ずらし(tilt)」に終始してきた。この問題に終止符を打つべく、アクター・ネットワーク理論は技術を社会制度的要因、物質的要因の異種混合物であると捉えるが、それは技術という人工物に対する科学のあり方を見失うものであった。これに対して本稿は、技術を物象化された異種混合の人工物(制度)と捉えつつも、その異種混合の人工物が形作る実践形成への介入こそが、技術研究としてレリバントな研究実践であることを主張する。