著者
福井 敏樹 安部 陽一 安田 忠司 吉鷹 寿美江
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.70-76, 2008-06-30 (Released:2012-08-20)
参考文献数
11
被引用文献数
2

目的:血圧脈波検査装置による上腕足首間脈波伝播速度(brachial-anklepulse wave velocity:baPWV)は非侵襲的な動脈硬化検査として定着してきているが,測定の問題点のひとつである血圧の影響を少なくした装置が最近開発され,その有用性を示す結果が増えてきている.今回は2つの脈波伝播速度測定装置の測定結果を比較することを目的とした.方法:対象は当院の人間ドックを受診し,オムロンコーリン社製のform ABI/PWVとフクダ電子社製のVaSeraの両者で測定した471名で,各々の測定値baPWVと心臓足首血管指数(cardio-anklevascular index:CAVI)について比較検討した.結果:血圧の影響はCAVIではbaPWVより減弱したものであったが,統計的には有意であった.動脈硬化の危険因子重積における測定値の増加はbaPWVの方が強い相関を示した.ただし動脈硬化の危険因子である肥満や喫煙の影響については両者ともその相関を示すことはできなかった.メタボリックシンドロームの該当者と非該当者での測定値の比較ではbaPWVは該当者で有意に高値を示したが,CAVIでは有意な差を認めなかった.結論:これらの結果より,baPWVもCAVIも共に血管の動脈壁硬化度を反映すると考えられるが,やはりCAVIにもbaPWVで認められた問題点は存在し,それらを把握した上で使用することが重要である.また,baPWVやCAVI値を動脈硬化の危険因子との関連から考えることの意義についてはさらに検証を必要とすると思われる.