著者
名取 志保 谷口 泰富
出版者
駒澤大学文学部心理学研究室
雑誌
駒澤大学心理学論集 : KARP (ISSN:13493728)
巻号頁・発行日
no.5, pp.27-32, 2003-03

現在,犯罪捜査に活用されている虚偽検出検査において,虚偽の反応には,定位反応だけではなく被検査者の認知過程(認知要因)が大きく関与するという報告がみられるようになった。これらの研究を概観すると,一方では質問や返答の様式を変化させる方法と,他方では認知過程と関連があると考えられている生理指標を測定する方法により,虚偽検出における認知過程が検討されている。本研究では,認知的状態と関連していると考えられる自発性瞬目を指標とした虚偽検出実験をおこない,裁決刺激提示時(ウソをついたとき)は瞬目数が減少し,瞬目潜時が遅れるという結果が得られた。また,近年,新たに指標として検討され始めた応答反応に関しても,先行研究と同様に,裁決刺激提示時に潜時が早くなる傾向が認められた。これらのことから,瞬目反応および応答反応を虚偽検出検査の指標として採用することの可能性が示唆された。
著者
名取 志保 長田 俊一 亀田 久仁郎 久保 章 竹川 義則 嶋田 紘
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.34-39, 2003-01-01
被引用文献数
5

症例は73歳の男性.2001年12月25日左側腹部痛を主訴に当院内科を受診した.来院時左側腹部に,圧痛と腹膜刺激症状を認め,左側結腸憩室炎の疑いで外科に入院した.入院時の腹部CTで左側腹部に腸管壁の肥厚像と周囲のけば立ちを認めた.絶飲食,抗生物質による治療で炎症所見は改善したが,間歇的な腹痛発作が遷延し,CT所見で腫瘤性病変を認めたため,2002年1月8日手術を行った.術中所見で,Treitz靭帯より50cmの空腸に6cm大の腫瘤性病変と,その腸間膜側に径4cm大のリンパ節を認め小腸部分切除術を行った.空腸の腫瘍は3型で,深達度se,リンパ節転移を伴うカルチノイド腫瘍と診断された.術後早期に,リンパ節再発によると考えられる間歇的な腹痛発作が再燃し,全身状態が衰弱して4月27日死亡した.空腸原発のカルチノイドは本邦ではまれであり,文献的考察を加え報告した.