著者
向 祐志
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1118, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
4

狭い治療濃度域を有する薬物や体内動態の個人差が大きい薬物では,therapeutic drug monitoring(TDM)が患者間の体内動態の違いを補正するために有用である.我が国におけるTDMは,特定薬剤治療管理料の算定対象薬物について実施されることが多く,一部の免疫抑制薬を除いて,血漿あるいは血清が薬物濃度測定用の検体として用いられている.近年,欧米を中心にdried blood spot(DBS)を検体とした薬物血中濃度測定法が盛んに報告されている.DBSによる検体採取には,1検体あたりの採取量が1滴の血液で済み,患者宅での採取が可能なため,医療コストを低減できる等の様々な利点がある.Linderらは抗てんかん薬のうち,カルバマゼピン(CBZ),ラモトリギン(LTG)およびバルプロ酸(VPA)では,DBS中濃度を血漿中濃度の代替指標として用いることができる可能性を示したので紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Evans C. et al., AAPS. J., 17, 292-300(2015).2) Martial L. C. et al., PLoS. One., 11, e0167433(2016).3) Li W., Tse F. L., Biomed Chromatogr., 24, 49-65(2010).4) Linder C. et al., Clin. Biochem., 50, 418-424(2017).