著者
向井 智哉
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.54-63, 2019 (Released:2021-12-07)

本研究の目的は、厳罰傾向および防犯行動を規定する要因を検討することである。日本において同時期に話題となった厳罰化および防犯行動の活発化は、これまで主として「体感治安」の悪化によって説明されてきた。しかし研究者の中には、「体感治安」だけではなく、自己決定を求める欲求やコミュニティによる決定を求める態度の増大を用いた説明を試みる者もいる。そのため本研究では、先行研究にもとづき、厳罰傾向および防犯行動はともに、犯罪不安および被害リスク知覚ならびに自己決定欲求、コミュニティによる自己決定と関連するとの仮説を設定し、検証した。332 名の回答者を対象にウェブ調査を行った。その結果、厳罰傾向および防犯行動は、犯罪不安、被害リスク知覚、自己決定欲求、コミュニティによる自己決定と有意な相関を示した。重回帰分析によってこれらの関連をさらに検討したところ、自己決定欲求の下位因子である自律欲求が厳罰傾向および防犯行動両方と有意な正の関連を示した。これらの結果から、厳罰傾向および防犯行動は、主として自律欲求という共通の要因によって規定されることが示された。
著者
向井 智哉 藤野 京子
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.86-98, 2020

本研究の目的は、刑事司法に対する態度を測定する尺度を作成することである。刑事司法に対す る態度についての研究は、厳罰化を中心として、1970 年代以降幅広く調査・研究されている。し かしその一方で、用いられる尺度が研究ごとに異なるため、相互の比較が困難になっているという 問題点が指摘されてきた。そこで本研究では、刑事司法に対する態度を正確に測定する尺度を作成 し今後の研究に資することを目指して質問紙調査を行った。具体的には、法学や社会学において行 われてきた犯罪化に関する議論を参照し、刑事司法に対する態度に含まれると考えられる 6 つの要 素を抽出した。その後、質問紙による調査を行い、因子構造と信頼性を確認し、ならびに基準関連 妥当性の観点から妥当性の検討を行った。その結果、「処罰の厳罰化」「処罰の早期拡大化」「治療 の推進化」「治療の早期拡大化」の 4 因子からなる尺度が作成され、一定の信頼性・妥当性を持つこ とが示された。