著者
向井 智哉 藤野 京子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.2001, (Released:2021-02-07)
参考文献数
71
被引用文献数
4

本研究は,少年犯罪者に対する厳罰志向性と少年犯罪に関する犯罪不安および被害リスク知覚,子どもは理解不能であるという子どもイメージの関連を検討することを目的とした。先行の議論や研究にもとづき,a)少年犯罪に対する厳罰志向性は少年犯罪に関する犯罪不安によって規定される,b)犯罪不安は被害リスク知覚によって規定される,c)被害リスク知覚は理解不能イメージによって規定されることを想定した仮説モデルを構成し,異なる想定を置いた別のモデルと適合度および情報量の観点で比較を行った。226名から得られたデータを分析したところ,上記の仮説モデルは支持された。
著者
向井 智哉 藤野 京子
出版者
日本応用心理学会
雑誌
応用心理学研究 (ISSN:03874605)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.219-229, 2020-03-31 (Released:2020-06-29)
参考文献数
43

This study aimed to explore the relationship of trust in actors related to criminal justice with attitudes toward criminal justice and to identify the determinants of trust. A questionnaire was administered to 332 Japanese adults. The following results were obtained: (1) trust in actors was generally determined by respondents' perceptions on actors' value similarity, capacity, and fairness; (2) the relationship between trust and perceptions varied depending on respondents' level of interest in crime-related issues; and (3) while attitudes toward criminal justice were related to trust in researchers, victims, prison officers, politicians, community members, and judges, they were not related to trust in policemen and prison officers The implications of these findings have been discussed.
著者
向井 智哉 藤野 京子
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.86-98, 2020 (Released:2020-04-05)

本研究の目的は、刑事司法に対する態度を測定する尺度を作成することである。刑事司法に対す る態度についての研究は、厳罰化を中心として、1970 年代以降幅広く調査・研究されている。し かしその一方で、用いられる尺度が研究ごとに異なるため、相互の比較が困難になっているという 問題点が指摘されてきた。そこで本研究では、刑事司法に対する態度を正確に測定する尺度を作成 し今後の研究に資することを目指して質問紙調査を行った。具体的には、法学や社会学において行 われてきた犯罪化に関する議論を参照し、刑事司法に対する態度に含まれると考えられる 6 つの要 素を抽出した。その後、質問紙による調査を行い、因子構造と信頼性を確認し、ならびに基準関連 妥当性の観点から妥当性の検討を行った。その結果、「処罰の厳罰化」「処罰の早期拡大化」「治療 の推進化」「治療の早期拡大化」の 4 因子からなる尺度が作成され、一定の信頼性・妥当性を持つこ とが示された。
著者
藤野 京子
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.33-46, 2010-02-28 (Released:2017-09-30)
参考文献数
20

本研究では,児童虐待の経験を乗り越えていくプロセスを明らかにすることを目的とした。そのため,児童のころ親から虐待を受けた経験を有しながらも,調査時点においては自身を主観的に幸福であると感じている30歳代の女性16名を対象に,その被虐待経験によってどのような影響を受け,さらにどのような経過をたどって今日に至っているのかについて,当事者の視点から明らかにすることを試みた。半構造化面接による面接調査を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析を行った。その結果,虐待されても当初はその行為を十分問題視できないものの,それが不当であると気づくことが,受身の被害者のままでいることからの脱却の試みにつながること,また,虐待への恐怖心が少なくなるにつれ,虐待がなぜ生じたかを多角的視点から理解しようとし,虐待をしてしまう親に対する洞察も深められるようになっていくことが明らかになった。加えて,虐待場面のみならずそれ以外の生活場面も含めて,自己効力感に気づけるような体験をすることが,社会適応を促す原動力となっていることも明らかになった。なお,虐待を受けなくなって以降も,虐待を受けたことや虐待を受けた自身に対する内的処理が変容していくことが示された。
著者
藤野 京子
巻号頁・発行日
pp.1-95, 2007-03

平成17年度-平成18年度科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書
著者
藤野 京子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.403-411, 2002-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
18
被引用文献数
1

少年鑑別所に入所中の221名の男子少年を対象に, 最近一緒にいる友人一人を思い浮かべさせ, その交友関係について調査した。まず, 大半の少年が, その交友について, 親をはじめとする周囲が認めており, 今後もその関係を断つつもりがないことが示された。その友人と一緒にいる理由については,「信頼・親和」,「被受容・被理解」,「不快回避」の3因子が抽出され, その友人との実際の付き合い方については, 「内面共有」,「防衛」,「享楽」,「独立」の4因子が抽出された。これらの回答結果からは, その交友関係が, うわべを取り繕ったその時その場限りのものではないことが示された。また, これらの因子間の関係を分析したところ, 「内面共有」には「被受容・被理解」及び「信頼・親和」が,「独立」には「信頼・親和」及び「不快回避」が影響を及ぼしていることが明らかにされた。加えて, それぞれの因子に, 非行少年自身の年齢, 非行歴, 加えて, 友人の非行歴がいかに影響を及ぼしているかについても検討した。
著者
藤野 京子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.26-37, 2023-03-30 (Released:2023-03-25)
参考文献数
36

自身の行為が謝罪に値するかもしれない状況下,どのようなコーピング方略を用い,それらが謝罪するかどうかにどう影響するか,さらに,ソーシャルサポートの有無やエゴ・レジリエンシー(ER)が,それらにどのような影響を及ぼすかを検討するため,20代(N=834)を対象にウェブ調査を実施した。研究協力者は自身のERについて自己評定し,さらに人に暴言を吐いたというシナリオを提示され,自身がその人だと想定して,いかにその状況で反応するかを回答するよう教示された。研究協力者は周りからサポートを提供される支援群,提供されない静観群にランダムに割り振られた。 ソーシャルサポートの有無によって,とられるコーピング方略の多寡や謝罪の程度に違いが見られた。また,コーピング方略のうち,計画立案方略は謝罪を促進させ,放棄・諦め方略は抑止させることが明らかになった。加えて,支援群では,放棄・諦め方略が少なくなり,謝罪が促進されるのに対して,静観群では,計画立案方略が少なくなり,謝罪が抑止される等の結果が得られた。加えて,ERは肯定的解釈に正の,放棄・諦め方略に負の影響を与えることが示された。
著者
向井 智哉 藤野 京子
出版者
日本応用心理学会
雑誌
応用心理学研究 (ISSN:03874605)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.83-93, 2021-11-30 (Released:2022-02-28)
参考文献数
34

This study aimed to investigate how images regarding criminal law are structured in the public's consciousness, and how these images relate to attitudes toward criminal justice. Using items prepared in the pilot study, criminal law images were measured and regressed using the attitudes toward criminal justice scale. Results from 333 individuals showed that the images pertained to five factors - liberty and rights, norms and morals, body and safety, function of systems, and privileges of a few people, and there were relationships between: 1) the support for harsher punishment and liberty and rights, norms and morals, and body and safety; 2) the support for criminalization and norms and morals; 3) the support for enhanced rehabilitation and liberty and rights; and 4) the support for medicalization and norms and morals as well as body and safety. These results suggest that the public's image of criminal law has an effect on their attitude toward criminal justice, and thus, must be taken into consideration when a criminal policy is enacted.
著者
藤野 京子
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.31-43, 2008-05-31 (Released:2017-09-30)
参考文献数
27
被引用文献数
3
著者
向井 智哉 藤野 京子
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.86-98, 2020

本研究の目的は、刑事司法に対する態度を測定する尺度を作成することである。刑事司法に対す る態度についての研究は、厳罰化を中心として、1970 年代以降幅広く調査・研究されている。し かしその一方で、用いられる尺度が研究ごとに異なるため、相互の比較が困難になっているという 問題点が指摘されてきた。そこで本研究では、刑事司法に対する態度を正確に測定する尺度を作成 し今後の研究に資することを目指して質問紙調査を行った。具体的には、法学や社会学において行 われてきた犯罪化に関する議論を参照し、刑事司法に対する態度に含まれると考えられる 6 つの要 素を抽出した。その後、質問紙による調査を行い、因子構造と信頼性を確認し、ならびに基準関連 妥当性の観点から妥当性の検討を行った。その結果、「処罰の厳罰化」「処罰の早期拡大化」「治療 の推進化」「治療の早期拡大化」の 4 因子からなる尺度が作成され、一定の信頼性・妥当性を持つこ とが示された。
著者
藤野 京子
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.47-58, 2014-08-31 (Released:2017-07-30)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本研究では,Baumeister et al. (1996)の自負心脅威モデルを参考にしながら,状態自尊心や状態不安が,怒り表出に至るプロセスを検証することを目的とした。286名(男性118名,女性168名,平均年齢19.89歳)に自己報告による調査が実施された。他者の面前で自身が否定的に評価された仮想状況での結果からは,(a) 状態怒りは怒り制御と怒り隠蔽に加えて怒り表出に直接影響を及ぼすが,この状態怒りは状態不安から正の影響を受けること,(b) 状態自尊心の低下は状態不安を高めること,(c) 状態怒りは怒り制御に負の影響を与えるのに対して,状態不安は怒り制御と怒り隠蔽の双方に対して正の影響を与えること,(d) 怒り隠蔽は怒り表出に正の影響を与えること,が示された。
著者
藤野 京子
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.47-58, 2014

<p>本研究では,Baumeister et al. (1996)の自負心脅威モデルを参考にしながら,状態自尊心や状態不安が,怒り表出に至るプロセスを検証することを目的とした。286名(男性118名,女性168名,平均年齢19.89歳)に自己報告による調査が実施された。他者の面前で自身が否定的に評価された仮想状況での結果からは,(a) 状態怒りは怒り制御と怒り隠蔽に加えて怒り表出に直接影響を及ぼすが,この状態怒りは状態不安から正の影響を受けること,(b) 状態自尊心の低下は状態不安を高めること,(c) 状態怒りは怒り制御に負の影響を与えるのに対して,状態不安は怒り制御と怒り隠蔽の双方に対して正の影響を与えること,(d) 怒り隠蔽は怒り表出に正の影響を与えること,が示された。</p>