著者
向井 秀文 高岸 幸弘 杉浦 義典
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.263-272, 2018-03-01 (Released:2018-03-06)
参考文献数
36
被引用文献数
2

近年,様々な心理的症状を説明する診断横断的なプロセスとして,反復思考の存在が明らかにされている。これまでの研究において,反復思考はメタ認知的信念によって形成されることが報告されている。しかし,考え続ける義務感といった,不安に対する予測力が強いメタ認知的信念との関連は検討されていない。したがって,本研究では,考え続ける義務感と様々な心理的症状の関連に対する反復思考の媒介効果について検討することを目的とした。分析の結果,考え続ける義務感と様々な心理的症状の関連は,反復思考に部分媒介されることが示された。さらに,様々な心理的症状に対する考え続ける義務感と反復思考の予測力は強いことも示された。これらの結果から,考え続ける義務感は,反復思考や様々な心理的症状を予測するメタ認知的信念であることが示唆された。したがって,考え続ける義務感の低減をターゲットとした介入が有効であることも示唆された。
著者
向井 秀文 杉浦 義典
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.137-147, 2022-11-25 (Released:2022-11-25)
参考文献数
43

近年,不安や抑うつといった内在化問題の低減に有効な治療アプローチの一つとして,メタ認知療法が注目されている。本研究では,考え続ける義務感といった内在化問題に対して強い予測力を有するメタ認知的信念に着目して,考え続ける義務感の低減をターゲットとしたメタ認知療法の効果検証を行った。大学生34名を統制群と介入群に振り分けて,各群のプレからフォローにかけての指標得点の変化を検討した。対応のあるt検定を実施した結果,統制群のすべての指標得点間に有意な差は認められなかった。一方で,介入群においては,摂食症状以外のすべての指標得点間に有意な差が認められた。また,効果量を算出したところ,統制群よりも介入群において,大きな効果量が認められた。以上から,考え続ける義務感の低減をターゲットとしたメタ認知療法の有効性が示唆された。