- 著者
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向井 隆久
丸野 俊一
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.2, pp.158-168, 2010-06-20 (Released:2017-07-27)
本研究の目的は,心的特性の起源(氏か育てか)に関する概念の発達を説明する上で,「概念は,状況・文脈から独立にあらかじめ成立している(伝統的概念観)のではなく,概念と状況・文脈が互いに整合する形で構成されて初めて成立する」という概念観の妥当性・有効性を検討することであった。そのため,小学2〜6年生300名を対象に,特性の起源を問う課題構造は同一であるが,子どもに認知される課題状況・文脈に違いがあると想定される2つの課題(乳児取り替え課題,里子選択課題)を用意し,状況・文脈の違いによって,特性の起源に関する認識に違いが生じるのか否かを実験的に検証した。特に本研究は,あらかじめ場合分けされた知識・概念では対応できないような,場に特有の内容で子どもに認知される状況・文脈(目標解釈や思い入れ,意味づけ)に着目した。結果は,乳児取り替え課題では,特性の規定因を'生み育て両方'とはみなしにくい低学年児の多くが,里子選択の状況では高学年児と同等に'生み育て両方'を規定因とみなし,特性の起源に関する認識が状況・文脈に整合する形で即興的に構成されることを示した。こうした結果を受けて考察では,子どもの示す理解の仕方は状況・文脈と一体となって絶えず変動するとみなし,「状況・文脈と概念との相互依存的で整合的な構成のされ方の変化」として概念変化を捉えることが適切ではないかという新たな概念観の有効性を議論した。