著者
向山 陽子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.94-109, 2016 (Released:2018-08-26)
参考文献数
13

本研究はビジネス日本語教育におけるタスク中心の指導の効果を検証することを目的とする。大学院ビジネス日本語コース在籍の2年生20名を実験群とし,ビジネス場面のストーリーを設定することで真正性を高めたタスク教材を用い,ビジネスメール・ビジネス文書作成の授業を15回行った。1回目,8回目,15回目に行ったタスクのパフォーマンス,および異なる指導を受けた対照群20名の15回目のタスクのパフォーマンスを比較した結果,実験群のビジネスメール作成能力(全体的評価,形式の適切さ,社会言語的適切さ,語用論的正確さ)に有意な伸び,および対照群との差が示され,ビジネス日本語教育において真正性を高めたタスク教材を用いた指導に効果があることが明らかになった。しかし,文法の正確さには有意な伸びが見られなったことから,文法能力向上のためには,言語形式により多くの注意を向けさせる指導を組み込む必要があることが示唆された。
著者
向山 陽子 Yoko MUKOUYAMA
出版者
国立国語研究所
雑誌
日本語教育論集 (ISSN:13469762)
巻号頁・発行日
no.23, pp.17-32, 2007

本研究は文法説明をしない暗示的帰納的指導の中で,学習者の文法学習に関する信念,及び指導方法に対する態度,学習ストラテジー,学習成果との関連を解明することを目的とする。初級中国人学習者161人の5件法質問紙調査データの因子得点とテスト得点との相関を分析した結果,「文法知識の役割の肯定的受け止め」の信念,指導方法に対する「学習困難感」と学習成果に負の相関があること,指導方法に対する態度によって使用する学習ストラテジーが異なることが示された。これらのことから信念・態度,ストラテジー,学習成果は相互に関連すること,学習者の個人差と指導方法が適合しないと指導効果が現れにくいことが示唆された。