著者
向山 陽子 Yoko MUKOUYAMA
出版者
国立国語研究所
雑誌
日本語教育論集 (ISSN:13469762)
巻号頁・発行日
no.23, pp.17-32, 2007

本研究は文法説明をしない暗示的帰納的指導の中で,学習者の文法学習に関する信念,及び指導方法に対する態度,学習ストラテジー,学習成果との関連を解明することを目的とする。初級中国人学習者161人の5件法質問紙調査データの因子得点とテスト得点との相関を分析した結果,「文法知識の役割の肯定的受け止め」の信念,指導方法に対する「学習困難感」と学習成果に負の相関があること,指導方法に対する態度によって使用する学習ストラテジーが異なることが示された。これらのことから信念・態度,ストラテジー,学習成果は相互に関連すること,学習者の個人差と指導方法が適合しないと指導効果が現れにくいことが示唆された。
著者
市嶋 典子 Noriko ICHISHIMA
出版者
国立国語研究所
雑誌
日本語教育論集 (ISSN:13469762)
巻号頁・発行日
no.25, pp.3-17, 2009

早稲田大学本稿では,日本語教育学会の学会誌『日本語教育』に掲載された「実践研究」の質的変化を分析し,問題点を考察した。分析の結果,(1)1966-1979年には,「実践と教育理論の関わりをそれほど重視しない」論文が掲載されていた,(2)1980-1989年には,教授法や理論を前提とした論文が現れた,(3)1990年以降,(2)の研究に加え,仮説検証型,実験型の研究や,教室内でのインターアクションや自己の内省に基づいた論文も見られるようになってきた-という傾向が浮かび上がってきた。また,問題点としては,多くの論文が,自身の教育観や教育実践のプロセスを示すデータ・次の実践への示唆を明らかにしていないという点が明らかになった。
著者
岡田 美穂 林田 実 Miho OKADA Minoru HAYASHIDA
出版者
国立国語研究所
雑誌
日本語教育論集 (ISSN:13469762)
巻号頁・発行日
no.23, pp.3-15, 2007
被引用文献数
1

九州女子大学北九州市立大学日本語学習者は,存在場所を表す格助詞「に」を用いるべきところに誤って「で」を用いることがある(例:大学の中で友達がいます)。本研究では,存在場所を表す「に」の習得の様子を探るため,日本語学習者を対象とした穴埋めテスト形式の調査を行った。その結果,上の誤りは日本語レベルが「中級の下」の学習者に最も多く見られ,存在場所を表す「に」の習得は「U字型発達」を示していた。また,上の誤りは,存在場所を表す「に」と範囲限定を表す「で」との混同により生じていると考えられる。