著者
呉 碩津 松山 幸彦 山本 民次 中嶋 昌紀 高辻 英之 藤沢 邦康
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.85-95, 2005-08-26
被引用文献数
5

過去30年間の瀬戸内海における主要赤潮構成種を概観すると,珪藻類やラフィド藻から有害・有毒な渦鞭毛藻へと遷移してきている.1980年から行政の指導の下で取り組まれてきた沿岸域へのリン負荷削減の結果,瀬戸内海などの閉鎖性海域では溶存態無機リン(DIP)濃度が低下し,溶存態無機窒素(DIN)との比(DIN:DIP比)が顕著に上昇してきている.同時に植物プランクトンが利用するリン源として溶存態有機リン(DOP)の重要性が増し,これを利用可能な渦鞭毛藻が増殖するようになってきたと考えられる.本論文では,そのような一連の現象について,既存の知見と新しいデータを交えながら考察した.