著者
緒方 正名 藤沢 邦康
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.259-266, 1991

わが国における代表的な石油汚染魚の発生例について記述した. また, 全国の水産試験場へのアンケートによる油臭魚発生を集計し, 年代別, 地域別, 原因別に分類した.<BR>水島海域で発生した油臭魚 (油臭ボラ) の中に石油精製工場排水に由来するトルエンを同定した. ついで, 岩国海域で捕獲された油臭魚から, 単環芳香族化合物, オレフィン類 (A重油成分) を検出した. また, 水島コンビナートに存在する石油精製工場の重油タンクからのC重油漏洩事故の際に, 水島海域で捕獲された石油汚染魚 (カレイ) からアルキルベンゾチオフェン類の有機硫黄化合物を検出した.<BR>現在までの成績から石油による環境および生物モニタリングには, 海域環境中試料としては海水, 海底泥が, また, 生物ではムラサキイガイが指標生物として適当であることが認められた.また, 石油汚染の指標化合物として, トルエンなどの単環芳香族化合物およびアルキルベンゾチオフェン, ジベンゾチオフェン, アルキルベンゾチオフェンなどの有機硫黄化合物が有効であることを述べた.
著者
呉 碩津 松山 幸彦 山本 民次 中嶋 昌紀 高辻 英之 藤沢 邦康
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.85-95, 2005-08-26
被引用文献数
5

過去30年間の瀬戸内海における主要赤潮構成種を概観すると,珪藻類やラフィド藻から有害・有毒な渦鞭毛藻へと遷移してきている.1980年から行政の指導の下で取り組まれてきた沿岸域へのリン負荷削減の結果,瀬戸内海などの閉鎖性海域では溶存態無機リン(DIP)濃度が低下し,溶存態無機窒素(DIN)との比(DIN:DIP比)が顕著に上昇してきている.同時に植物プランクトンが利用するリン源として溶存態有機リン(DOP)の重要性が増し,これを利用可能な渦鞭毛藻が増殖するようになってきたと考えられる.本論文では,そのような一連の現象について,既存の知見と新しいデータを交えながら考察した.