著者
藤原 建紀 鈴木 健太郎 木村 奈保子 鈴木 元治 中嶋 昌紀 田所 和明 阿保 勝之
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.145-158, 2022 (Released:2022-05-10)
参考文献数
43
被引用文献数
3

海域の全窒素 (TN) ・溶存無機態窒素 (DIN) が大きく低下した大阪湾において, 生態系の栄養段階ごとに生物量の経年変化および季節変動パターンの変化を調べた。調査期間の1990~2019年には, 経年的水温上昇はほとんどなかった。DINの低下に伴って, 一次生産量が減り, クロロフィルで測った植物プランクトン量が減り, これが繊毛虫・カイアシ類などの動物プランクトンの減少, 仔稚魚量の減少へと連動していた。生態系全体としては, 各栄養段階の現存量がほぼ線形的に応答するボトムアップのシステムとなっていた。TNの低下が, DINの枯渇期間を夏のみから, 春から夏に広げ, これによる一次生産量の低下が, 上位栄養段階への窒素フローを減らしたと考えられた。また, 仔稚魚では, 内湾性魚種はどの優占魚種も生物量が大きく減少していた。一方, 広域回遊性のカタクチイワシだけは減らず, この一種のみが優占する状態に変化していた。
著者
日下部 敬之 中嶋 昌紀 佐野 雅基 渡辺 和夫
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.713-718, 2000-07-15
参考文献数
25
被引用文献数
2 4

大阪湾において, イカナゴ仔魚の日中の鉛直分布を調査したところ, 5m層を極大として, 10m以浅の水深に集中的に分布していた。また, 浅い層の仔魚ほど多く摂餌していた。しかし水温, 塩分, および主餌料であるカイアシ類幼生の鉛直分布からは, これらの事象を説明できなかった。一方, 飼育実験の結果, 平均全長6.8mmのイカナゴ仔魚のワムシ摂餌数は明るいほど多く, 特に10lxと(10)^2lxの間で約3倍の差があった。現場海域で水中照度が(10)^2lxを下回る水深は15∿20mであったことから, イカナゴ仔魚が日中この水深帯に分布するのは, 摂餌に適した明るさを得るためであろうと考えられた。
著者
呉 碩津 松山 幸彦 山本 民次 中嶋 昌紀 高辻 英之 藤沢 邦康
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.85-95, 2005-08-26
被引用文献数
5

過去30年間の瀬戸内海における主要赤潮構成種を概観すると,珪藻類やラフィド藻から有害・有毒な渦鞭毛藻へと遷移してきている.1980年から行政の指導の下で取り組まれてきた沿岸域へのリン負荷削減の結果,瀬戸内海などの閉鎖性海域では溶存態無機リン(DIP)濃度が低下し,溶存態無機窒素(DIN)との比(DIN:DIP比)が顕著に上昇してきている.同時に植物プランクトンが利用するリン源として溶存態有機リン(DOP)の重要性が増し,これを利用可能な渦鞭毛藻が増殖するようになってきたと考えられる.本論文では,そのような一連の現象について,既存の知見と新しいデータを交えながら考察した.