- 著者
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和田 琢磨
- 出版者
- 立教大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2007
本研究の目的は、西源院本・神田本『太平記』を中心に南北朝時代から室町時代にかけての軍記の成立、本文異同の問題などについて考察することにある。本年度の目標は、公的機関でもマイクロフィルムを披見できない『太平記』や『難太平記』をはじめとする関係作品の基礎調査と、古態本『太平記』の本文の問題について考察することにあった。その成果は以下の三点に大略まとめられる。(1)『太平記』伝本の調査古態本の前田尊経閣蔵相承院本『太平記』を調査し紙焼き写真をとった。この伝本調査も踏まえ、古態本『太平記』の研究、本文の校合・調査を進めている。また、古態本ではないが、永青文庫蔵の絵入り『太平記』を一部調査した。この伝本の調査は今後も続けていく予定である。(2)『難太平記』ほか他作品の調査『太平記』の成立過程について具体的に語っている、室町時代初期の唯一の資料である『難太平記』の調査を行った。その過程で、新出伝本を発見した。この伝本についての報告は、次年度にする予定である。本年度は、香川県の多和文庫や長崎県の島原松平文庫にも調査に行き、軍記や中世の作品の原本を調査し、写真に撮った。中には、軍記の享受の問題を考える上で興味深い資料もあり、この資料についても報告する予定である。(3)阪本龍門文庫蔵豪精本『太平記』の調査興味深い伝本であるといわれながら、その内容が知られていない豪精本『太平記』の調査を行った。この調査は今年で6年目になるが、今後も継続していく予定である。