著者
神山 麻由子 岡本 博照 細田 武伸 和田 貴子
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.557-564, 2013-08-31 (Released:2013-10-15)
参考文献数
20

救急隊員の仕事のストレスを把握する目的で,X 市消防局職員1,246 人に対して勤務状況調査票と職業性ストレス簡易調査票を用いて悉皆調査を行い,このうち救急隊員を消防・救助隊員と比較した。救急隊員215 人は消防隊員418 人と救助隊員163 人に比べ,出場時間と出場関係の業務時間が有意に長く,休憩時間と仮眠時間は有意に短かった。救急隊員の不良なストレス要因は,消防隊員と比較して心理的な仕事の負担(質)および仕事の裁量度,救助隊員と比較して心理的な仕事の負担(量)および仕事の適性度を認め,ストレス反応は救助隊員と比較して不良であった。一方,男性標準集団との比較では,救急隊員のストレス反応は良好であり,ストレス要因の少なさと良好な社会的支援の影響が示唆された。救急患者の適切な搬送はきわめて困難な業務であるため,ストレス要因対策だけでなく上司,同僚,家族や友人からの社会的支援が重要であることが示唆された。
著者
野島 真美 岡本 博照 神山 麻由子 和田 貴子 角田 透
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.13-23, 2013 (Released:2013-04-25)
参考文献数
24
被引用文献数
4

平成23年3月11日に発生した東日本大震災の被災地に派遣された消防官の惨事ストレスとメンタルヘルスを把握する目的で,平成23年8月,他県から派遣された消防官178人に対して出来事インパクト尺度改訂版(IES- R)などを使用して調査した。有効回答者は126人,全員男性で,平均年齢は40.9歳(22~58歳),被災者の救援活動任務が85人,派遣職員の後方支援任務は41人であった。派遣回数は平均1.6回(1~6回)であった。IES-R得点の平均は4.0±4.9点(0~21点)で,心的外傷後ストレス障害(PTSD)の危険性が指摘される25点以上の職員の存在は認めなかった。その理由として,被災地外である居住地に帰還して惨事ストレス曝露の機会が無くなった可能性が考えられた。IES-R 得点に対する惨事ストレス要因ごとでの比較検討した結果,派遣消防官のメンタルヘルスの危険因子として「派遣回数の多さ」,「災害発生当日の派遣」,「救援活動任務」のほか,新たに「被害甚大な被災地での滞在」が示唆された。
著者
久米 梢子 岡本 博照 久保 佑美子 神山 麻由子 和田 貴子
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.645-656, 2016-10-31 (Released:2016-10-31)
参考文献数
10

救急救命士有資格者を雇用した二次救急病院7施設の職員(医師,看護師,コメディカル,事務職員)を対象として,救急救命士有資格者の有用性・必要性の評価と彼らに行ってほしい業務について調査した。回答者481人のうち約7割の職員が救急救命士有資格者を必要で役立つと評価していた。また,彼らに行ってほしい業務として「胸骨圧迫」「救急外来でのトリアージ」「バイタルチェック」「救急車からの電話対応」「転院搬送の付き添い」が挙げられ,救急救命士有資格者の約7割以上がその業務を実際に行っていることが判明した。病院前救護で活躍する救急隊員のための資格である救急救命士であるが,その有資格者は二次救急病院でも活躍可能な人材であることが示唆された。しかし,救急救命士有資格者の不明瞭な業務内容とその存在の不明確さについて疑問視され,有資格者を活用するには業務内容の基準化や教育内容に関する議論が必要と思われる。