著者
齋藤 祐介 田久 浩志 齊藤 英一 田中 秀治 植田 広樹 曽根 悦子
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.625-632, 2018-10-31 (Released:2018-10-31)
参考文献数
18

背景:プレホスピタルでは,ショックの早期認知のため出血痕から出血量を推定することがある。しかし,測定方法(OF法)は床や衣類の2種類のみを対象としており,アスファルト舗装(A舗装)と出血痕の関係性についてはわかっていない。目的:A舗装における出血痕と推定出血量について検討する。方法:3種類のA舗装を実験群,OF法を対照群として,模擬血液を用いて出血痕の面積を測定し比較検討した。結果:200mLの出血痕では,OF法を1,800cm2としたとき,密粒度舗装(排水性能なし)は778.5m2で約0.4倍,排水性舗装(排水性能あり)は84.9cm2で約0.04倍の違いがみられた。考察:OF法は簡易的な出血痕測定であるが,A舗装では過小評価のおそれがある。舗装表面の形状と道路種別を評価して測定することで過小評価を防ぐことができる。結論:A舗装の出血痕は,排水性能の有無を評価して出血量を推定する必要がある。
著者
植田 広樹 田中 秀治 田久 浩志 匂坂 量 白川 透 後藤 奏 島崎 修次
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.578-585, 2016-08-31 (Released:2016-08-31)
参考文献数
10
被引用文献数
1

背景:病院外心停止傷病者に対するアドレナリンの投与の有効性については臨床的なエビデンスが不十分である。目的:救急救命士が心停止プロトコールに沿って実施したアドレナリン投与が社会復帰率に及ぼす影響について検討すること。方法:全国ウツタインデータ(2006〜2012年)から300,821症例を対象とし,アドレナリン投与群(n=40,970)と非投与群(n=259,851)に分類して効果を解析した。結果:アドレナリン投与による心拍再開率は非投与群の7.9%に対して投与群が22.5%と良好なものの,社会復帰率は非投与群の3.2%に対して投与群が1.9%と低値を示した。しかし,接触から7.9分以内に限定した早期投与群を検討すると,アドレナリンを投与された傷病者の社会復帰率は4.2%と,それ以降に比べ高かった〔OR=4.23(3.44-5.20)〕。考察:今後は,救急救命士が傷病者への接触から7.9分以内にアドレナリンを投与できるように何らかの工夫を講じ,傷病者接触から薬剤投与までの時間を短縮することが必要と言える。結語:病院外心停止症例においてアドレナリンは,早期に投与すれば社会復帰率を改善しうると考える。
著者
植田 広樹 田中 秀治 田中 翔大 匂坂 量 田久 浩志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.46-51, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
参考文献数
15

背景:近年,早期に投与されたアドレナリンが脳機能予後を改善することが報告されている。しかし,119番通報から傷病者への接触までの時間(以下,Response time)と,傷病者へ接触してからアドレナリンを投与するまでの時間(以下,Adrenaline time)を関連付けた報告はない。目的:本研究の目的は,病院外心停止症例において救急救命士による早期アドレナリン投与がResponse timeに関係なく,脳機能予後の改善に影響を及ぼすか検討すること。方法:全国ウツタインデータ(2011〜2014年)を用いた後ろ向きコホート研究を実施した。対象は年齢8歳から110歳までの目撃ありの心停止(心静止,VF,無脈性VT,PEA)でアドレナリンの適応であった症例のうち,119番通報から救急救命士が傷病者への接触まで16分以内,かつ傷病者へ接触してから22分以内(99%タイル以内)にアドレナリンを投与した13,326症例を抽出した。対象をResponse timeが8分以内の群(n=6,956)と8分以上16分以内の群(n=6,370)の2群に分類し,さらにそれぞれの群をAdrenaline timeが10 分以内の群と,10分以上の群の2群に階層化した。Primary outcomeを1カ月後脳機能予後良好率,Secondary outcomeを心拍再開率としてロジスティック解析を実施した。結果:Response timeの2群に対して,Adrenaline time の早さにより1カ月後脳機能予後良好率に影響を与えるかオッズ比で比較してみたところ,Response timeが8分以内の群は2.12(1.54〜2.92)であった。8分以上16分以内の群は2.66(1.97〜3.59)であった。一方,心拍再開率はResponse time が8分以内の群で2.00(1.79〜2.25),8分以上16分以内の群で2.00(1.79〜2.25)であった。Response timeが8分以内の群も8分以上16分以内の群も,Adrenaline timeが10分以内の群の方が10分以上の群と比較し1カ月後脳機能予後良好率,心拍再開率ともに有意に高かった。考察:病院外心停止症例においてアドレナリンは,Response timeが8分以上かかったとしても,16分以内であれば,救急救命士が傷病者へ接触後できる限り早期に投与すれば1カ月後脳機能予後良好率を改善し得ると考える。結語:今後,救急救命士は傷病者への接触から10分以内の早期にアドレナリンを投与するための工夫を行うとともに,地域のプロトコールを見直すなど,早期にアドレナリンを投与できるための努力が必要である。
著者
山崎 真悟 中川 洸志 植田 広樹 田中 秀治
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.577-584, 2023-10-31 (Released:2023-10-31)
参考文献数
13

目的:横須賀市の病院外心停止(以下OHCA)傷病者に対する,現場出発前後のアドレナリン(以下ADR)投与のタイミングと自己心拍再開(以下ROSC)の関連を検討すること。方法:横須賀市消防局のウツタインデータを用い,2013年1月1日〜2022年4月30日までのOHCAでADRを投与された傷病者を対象とした。ADR投与のタイミングを現場出発前投与群(以下,現発前群)と現場出発後投与群(以下,現発後群)の2群に分類し,多変量ロジスティック回帰分析によりADR投与のタイミングとROSCの関連を推定した。結果:対象のOHCA傷病者は1,122例,現発前群は483例,現発後群は639例であった。多変量ロジスティック回帰分析の結果,現発前群は現発後群と比較しROSCと有意な関連を示した(AOR 2.03,95%CI 1.31-3.16)ほか,現場滞在時間が4分延長していた。結論:現発前の早期ADR投与は早期ROSCにつながる一方で現場滞在時間の延長も示した。MC協議会は救急隊員に対して早期ADR投与の重要性について教育が必要である。
著者
植田 広樹 田中 秀治 田久 浩志 匂坂 量 田中 翔大 中川 隆
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1, 2017-04-01 (Released:2017-04-08)
参考文献数
9

病院外心停止例へのアドレナリン投与タイミングは地域MCにより様々である。傷病者接触からアドレナリン投与までの時間(以下,アドレナリン投与までの時間)と社会復帰率の関係を地域別に明らかにするため,全国ウツタインデータからアドレナリンを投与された40,970症例を抽出し解析した。アドレナリン投与までの時間は最短県で平均9.5±5.1分,最長県で平均19.8±7.5分と大きな差異をみた。アドレナリン投与までの時間と社会復帰率は負の相関を示し(y=-0.1592 x +5.6343;R2=0.184),早期投与ができている県ほど社会復帰率は高かった。今後,地域メディカルコントロール協議会は,自地域のウツタインデータを分析しアドレナリンを早期投与する方法を再検討する必要がある。
著者
小松 義孝 田中 秀治 櫻井 勝 黒木 尚長 櫻井 嘉信 田久 浩志 島崎 修次
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.631-637, 2017-10-31 (Released:2017-10-31)
参考文献数
11

目的:救急車を各走行条件のもと加速度が胸骨圧迫深度に与える影響と胸骨圧迫実施者の姿勢制御の効果を検討した。対象と方法:救急隊員の男性救急救命士,32人を対象に実験的研究を行った。実走行させた救急車内で胸骨圧迫を行い,直線,加減速,左右カーブで,胸骨圧迫実施者の体幹部を固定し姿勢制御した状態と非制御時の胸骨圧迫深度,リズム,胸骨圧迫位置,リコイルを比較検討した。走行中の救急車内における加速度は,加速度計を防振架台に設置し計測した。統計学的検討は各比較検討箇所で実施した5回分の胸骨圧迫時の比較項目平均値についてt検定と分散分析(p<0.05)を,また群間比較にBonferroni法(p<0.005)を用いた。結果:実施者の姿勢制御を行った群は非姿勢制御群に比べて,右カーブと減速で胸骨圧迫深度が有意に深くなった(p<0.05)。その他の評価項目に有意差はなかった。結論:実走行中の救急車内で胸骨圧迫実施者の姿勢制御をすることにより,右カーブと減速による影響が軽減され,深い胸骨圧迫が可能となった。
著者
中川 洸志 匂坂 量 齋藤 駿佑 都 城治 田久 浩志 田中 秀治
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.7-15, 2023-06-22 (Released:2023-07-26)
参考文献数
29

目的:傷病者および都道府県レベルでのアドレナリン投与時間と神経学的転帰の関連を検討すること。方法:ウツタインデータ2015-2019年において,病院前にてアドレナリン投与を受けた18歳以上のOHCAを対象とした。マルチレベルロジスティック回帰分析を行い,傷病者および都道府県レベルでのアドレナリン投与時間(1分増加単位)と神経学的転帰良好(CPC1-2)の関連を検討した。結果:Shockable群とNon-shockable群において,傷病者レベルおよび都道府県レベルのアドレナリン投与時間の遅延(1分増加単位)はCPC1-2に有意な負の関連を示した。結語:傷病者および都道府県レベルでのアドレナリン投与の遅延とCPC1-2の有意な負の関連を示した。
著者
杉木 翔太 喜熨斗 智也 羽田 克彦 櫻井 勝 原 貴大 武田 唯 中川 洸志 田中 秀治
出版者
一般社団法人 日本救急救命学会
雑誌
救急救命士ジャーナル (ISSN:2436228X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.39-44, 2021-06-15 (Released:2023-06-08)
参考文献数
13

【目的】群衆密集度が高い状況や,複数階を有する建築物において自動体外式除細動器(automated external defibrillator,以下AEDと略す)が到着するまでの時間の関連性を検討すること。【方法】模擬傷病者発生場所とAED設置場所の往復200mの道程にて,混雑群(10m四方に70名以上)と閑散群(10m四方に10名以下)のAED取得に要する時間を測定し,両群の往復時間について,t検定を用いて比較した。また,1階から6階までの階段にて,模擬傷病者発生場所からAED設置場所までの往復時間を各階層で計測した。【結果】混雑群は往復平均時間が有意に延伸した(混雑群 vs 閑散群;127.8±10.6秒 vs 102.7±6.5秒,p<0.001)。また,階層が上がるほど往復平均時間は延伸したが,いずれの階も往復2分以内にAEDの確保が可能であった。【結語】群衆密集度や上下の移動は,AED到着までの時間に影響を及ぼすため,高い群衆密集度が予想される場合やAEDを設置する建築物を考慮して,AEDの戦略的な配置が重要であると考える。
著者
惣野 円彩 坂梨 秀地 中川 洸志 田久 浩志 高橋 宏幸 田中 秀治
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.71-76, 2022-10-07 (Released:2022-10-15)
参考文献数
10

【背景】昨今,本邦においてオートショックAEDが発売された【目的】ファーストレスポンダーを対象にオートショックAEDと一般的なAEDの操作時間の比較を行うこと【方法】ファーストレスポンダーを対象に,オートショックAEDと一般的なAEDを用いたクロスオーバーランダム化比較試験(n=39)を行い,操作時間を比較した【結果】オートショックAEDでは,到着から電気ショックまでの平均が77.1±10.9秒とAEDの82.9±10.6秒と比べ5.8秒短縮した【結語】ファーストレスポンダーにおいてオートショックAEDは適切かつ迅速に操作が可能である
著者
千田 いずみ 田中 秀治 高橋 宏幸 喜熨斗 智也 白川 透 島崎 修次
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.575-584, 2015-08-31 (Released:2015-08-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

背景:2011年10月に発表された救急蘇生法の指針に,心肺蘇生の学校へのさらなる普及の重要性が示された。目的:小学生の心肺蘇生法に対する理解力および実技能力を検討すること。対象方法:小学6年生96名を対象に心肺蘇生の知識の確認試験および1〜6年生214名を対象に実技試験を行った。結果:心肺蘇生法に関わる知識ではほとんどの問題で80%以上の正答率を得た。実技では高学年でも平均圧迫深さが30mmと十分な圧迫深度に達しなかった。人工呼吸では十分な吹き込みができたのが64%,AED操作は100%正しく操作することができた。考察:心肺蘇生に対する理解力は小学6年生で十分備わっていることが判明した。胸骨圧迫の確実な実施は難しいものの,人工呼吸やAED操作は正しく実施する可能性が見出せた。結論:中学生の体格では胸骨圧迫の実施が可能であると報告されていることから,小学生への心肺蘇生法教育の目的は今後の成長を見越した知識の習得および技術の獲得にあるといえる。
著者
田中 秀治
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.170a, 2016-10-20 (Released:2016-12-17)

PDFファイルをご覧ください。
著者
田中 秀治
出版者
日経BP
雑誌
日経エレクトロニクス = Nikkei electronics : sources of innovation (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.1230, pp.72-76, 2021-08

米国のスタートアップ企業である米Vesper Technologiesが骨伝導MEMSマイクを発売した。狙いは、骨伝導MEMSマイクを圧電式MEMSマイクと組み合わせ、AirPodsのようなヘッドホンのノイズキャンセリングに使うことだ。東北大学教授の田中秀治氏がこの新しい使い方や将来展望…