- 著者
-
和田正美
Masami WADA
- 雑誌
- 研究紀要
- 巻号頁・発行日
- vol.13, pp.239-251, 2012-03-31
本稿は,大学での講義「西洋教育史」に使用する教科書を作ることを想定して作成したものである。教育思想を正しく深く理解するには,歴史,文化を十分理解していなければならない。大学は学問の場であるかぎり,幅広い領域の知識を統合化する教育が必要であることは言うまでもない。しかし現在,大学の講義内容に相応しい教科書は皆無といってよい。専門書は豊富にあるが,大学の講義を想定しては書かれていないのである。 ソクラテスの時代の倫理・教育思想は,決して突然に生まれ出たものではない。その背景となり,推進力となったものとして,自然哲学者たちの思想,ギリシア悲劇,自然中心主義から人間中心主義への転換をはかったソフィストたちの思想などを挙げることができる。 よって,本稿は,ギリシア神話,伝説などを扱うギリシア悲劇,自然哲学者たち,ソフィストたち,そして,ソクラテス,プラトン,アリストテレスの三大哲学者の倫理思想を考察することにより,古代ギリシアの倫理思想を概観する。