著者
北仲 博光 和知野 純一 荒川 宜親
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.479-485, 2014-07-25 (Released:2014-09-10)
参考文献数
12

近年,カルバペネム耐性の腸内細菌科菌種(CRE)の存在が,日常の臨床現場において問題となっており,カルバペネム耐性の表現型に基づいたCREの分子機構の解明は極めて困難となりつつある.本研究では,カルバペネム非感性又はセフェム耐性を示すEscherichia coli 3株(NUBL-5310,NUBL-5317及びNUBL-9600),Klebsiella pneumoniae 2株(NUBL-5307及びNUBL-5309),Enterobacter aerogenes 1株(NUBL-5311)及びEnterobacter cloacae 1株(NUBL-7700)について,薬剤感受性の測定や阻害剤試験及びPCRを用いてβ-lactamaseの種類の特定を試みた.一部の株については,接合伝達実験,形質転換実験,クローニング,塩基配列の決定を行った.解析したE. cloacae NUBL-7700においては,PCRによりblaIMPとblaCTX-M-1型の保有が確認された.カルバペネムに低感受性もしくは耐性を示す残りの6菌株からは新規のカルバペネマーゼ遺伝子は検出されなかったが,blaCMYやblaDHA,blaCTX-M-型のβ-lactamase遺伝子が検出された.E. aerogenes NUBL-5311については,アミノフェニルボロン酸によりセフェム系抗菌薬の感受性が回復することやPCRによりプラスミド性のβ-lactamase遺伝子が検出されない事から染色体性のAmpC型β-lactamaseの産生量が増加していることが推測された.解析した残りの6株については,CMY-,DHA-あるいはCTX-M-型β-lactamaseの産生量の増加に特定の外膜蛋白質の減少または欠失が加わる事によりカルバペネムへの耐性度が上昇しているという可能性が考えられた.