著者
和辻 敏子 宮本 悌次郎
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.213-218, 1988-11-20

植物たん白に対するKFプロテアーゼの作用と、調理への応用を検討するために、プロテアーゼ処理した植物たん白からの遊離アミノ態窒素の定量、KF汁入りのクッキー、揚げボールと対照の官能検査、クッキーの硬さ、グルテンにプロテアーゼを作用させた場合のグルテン残存率の測定と、電気泳動等を行い以下の知見を得た。1.植物蛋白に対するプロテアーゼの作用は、KFでは木綿豆腐、高野豆腐、小麦粉に強く、きな粉に弱かった。パパインでは小麦粉に強く、きな粉に弱く、パンクレアチンでは、高野豆腐、豆乳に強く、うずまき麩、小麦粉に弱かった。2.調理へのKF利用として、KF汁入りクッキーは官能検査により、バター、卵が減量できると考えられた。又ドリュールなしでも良い焦げ色が付き、焼く時間も短く、歯ざわりの良いクッキーが出来たが、焼き上がりの形はシャープさに欠けていた。3.KF汁入りクッキーとコントロールのクッキーの硬さは、硬度計により有意水準0.5%でコントロールのクッキーが硬かった。4.揚げボールの官能検査結果からKF汁入り揚げボールは、BPを使用しなくても統計的に有意においしく、又さっくりとして、砕けやすかった。5.グルテンに対する作用をKF汁としょうが汁のプロテアーゼについて調べた結果、KF汁の方がしょうが汁よりも、グルテンに対する作用が強く、官能検査結果と一致した。6.電気泳動結果から、KFとグルテンとの反応〓液では、標準牛血清アルブミンの2量体付近及び標準アルドラーゼ付近にバンドが見られた。
著者
和辻 敏子 宮本 悌次郎
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.317-321, 1989-12-20
被引用文献数
1

KFを入れたゼラチンゼリーを調製するために、KFプロテアーゼの阻害を検討して次の結果を得た。1)検討した阻害剤のうちでは、シナモンの精油成分であるシンナムアルデヒドは、明らかにその効果が認められた。その他の精油成分や香辛料油出液については、抑制効果を認めたものがあるが、官能的に使用できる濃度ではなく、阻害剤として今回の目的に利用できるものはなかった。2)官能検査結果では、CA添加KFスライスゼリーと無添加のKFスライスゼリーとの間に、有意水準2%で香に、又有意水準5%で総合評価に於いて、CA添加KFスライスゼリーの方が好まれた。KFさく汁、又は沈殿物とCAを添加したゼリーの香は、有意に対照ゼリーよりも好まれた。これらの結果からKFにCAを添加するか、又はゼラチン液及びカラギーナン液で層状ゼリーを作りKFをカラギーナン層に加える事により官能的に実用可能なゼリーの形成が見られた。3)KFスライスを入れたゼリーの強度は、対照ゼリーより低下したが、これに官能的に可能な濃度のCAを加えることにより、対照ゼリーの強度近くまで回復をした。4)以上の結果からCAを添加したKFスライスを使用したゼラチンゼリーは、香を改善するとともに、KFプロテアーゼを阻害して対照ゼリーに近いゼリー強度を示すゼリーの形成を認めた。
著者
和辻 敏子 薮中 緑
出版者
甲子園短期大学
雑誌
甲子園短期大学紀要 (ISSN:0912506X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-13, 1986-12-25

昭和58年度、昭和59年度に実施された生活実習ハウスの食生活の実態を検討した結果は次の通りである。1生食形態では、朝食に於いて58年度のパン食型から59年度の米食型への移行がみられ、昼食夕食は共に米食中心であった。副食形態では、主食形態に影響されて58年度と59年度の朝食に差がみられたが、昼食は同じ傾向を示した。夕食では58年度は和食、59年度は洋食形式がみられた。2食品の出現状況では朝食に於いて、58年度は牛乳、その他の野菜、59年度では豆製品、緑黄野菜が高い出現率を示した。夕食において58年度は豆製品、海草類、59年度では、乳・乳製品、豚肉、じゃがいも、にんじん、レタスの使用度に差がみられた。31日の摂取食品数は、58年度38品目59年度41品目であった。4生成分析の上位5主成分にバリマックス回転を実施し、意味づけを行った。5重回帰分析を行った結果、とりあげた説明変数は1日の摂取食品数の予測に役立っていた。658年度の学生の調理実習評価と生活実習ハウスの献立に使用された食品数との間に有意水準1%で正の相関がみられた。759年度の食品群別摂取量は「目安」にほぼ充足されていた。又栄養摂取量では、Ca、Feの不足がややみられた。終わりに、多変量解析等にご助言をいただきました本学木村昌幸講師に、深く感謝いたします。なお本研究の一部は、通算61回日本家政学会関西支部会(昭和59年5月)において発表した。