著者
善本 知広
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.344-344, 2016
被引用文献数
1

<p>  2016年は,石坂公成,照子博士によるIgE発見から50年目のアニバサリーイヤーにあたる.過去20年ほどの間にアレルギー研究は飛躍的に進展してきた.そこには免疫学の進歩が大きく貢献している.しかし,未だアレルギー発症機序には不明な点が多く,根本的な治療技術は確立されていない.その結果,国民の約40%がアレルギー性鼻炎の症状に悩み,食物アレルギーの児童が学校給食によって死に至る症例も後を絶たない.</p><p>  このような問題点が生じている理由として次の2つが考えられる.まず,アレルギー疾患の多様性・複雑性があげられる.アレルギー反応は抗原の種類や感作経路などによって多様な炎症像を呈する.2つめの理由として,動物モデルにおける知見とそれの患者への応用との間に大きな乖離が見られることがあげられる.モデルマウスを用いた研究成果は非常に有用であるが,マウスとヒトでの発症機序は必ずしも一致しない.そのため,マウスで得られた知見と患者で得られた情報とを相互にフィードバックしていくことが重要である.</p><p>  この様な問題点を克服すべくアレルギー研究は新たな展開を迎えている.本セミナーでは,「アレルゲン–IgE–マスト細胞–ヒスタミン」という従来からのアレルギー発症機序に加え,新たに登場した様々な細胞やサイトカインを紹介し,アレルギー疾患の多様性を解説する.さらに,アレルギー患者の病態を反映したモデルマウスを用いた研究成果を紹介したい.</p>