著者
善養寺 聡彦
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.159-167, 2008-12-25

ナミテントウが晩秋の暖かい日に,明るい色の標的に向かって飛来集合することは,一般によく観察される.しかし,飛来集合する特定の日がどのように決まるかに関しては,これまで明らかにされていなかった.千葉市内の2か所における9年間の観察記録をもとに,この飛来集合を引き起こす環境条件を検討したところ,日長の短縮あるいは低温のわずかな経験では不十分であることがわかった.それよりはむしろ,ある基準温度以下の低温にさらされる経験が累積してはじめて,この行動が引き起こされると推察された.集められたデータを分析した結果,もっとも妥当性がある基準温度は14.0℃で,これ以下の累積低温量が257.8を超え,さらにその後の好気象条件(12時の気温が16.2℃以上,風力4以下,晴天あるいは薄曇り)の日に,ナミテントウの飛来集合が起こると考えられた.