著者
山本 周平 細石 真吾
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.133-135, 2010-09-25

Alate individuals of a tropical fire ant, Solenopsis geminata, were found by the first author on the ship "Ogasawara-maru", which traveled from Chichi-jima (the Ogasawara Islands) to Tokyo. This harmful species is known to occur in Japan, but records have hitherto been limited to isolated islands such as Iwo-jima (the Ogasawara Islands) and Okinawa-jima (the Ryukyu Islands). Since the liner anchored close to Iwo-jima just before that cruise, when it was possible that individuals of the species flew onboard. The discovery suggests the likelihood that the ant has been unintentionally introduced to Chichi-jima and even to the mainland of Japan.
著者
田中 誠二
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.113-121, 2013-04-05

コガネムシの1種,Lepidiota mansuetaは,インド,アッサム州を流れる大河,バラマプトラ川に形成された世界最大の中州島,マジュリ島において2008年以降に個体数を急増させ,サトウキビをはじめさまざまな作物の根茎を食害し,農作物に深刻な被害をひきおこしている.筆者は2012年11月にこの島を視察し,このコガネムシの生態と被害の状況などに関する情報を収集した.この論文は,L.mansuetaの生活史,被害の状況,防除対策,問題点,今後の計画と展望について報告する.また生活史や行動パターンが,この種に似ている日本の沖縄県宮古島におけるケブカアカチャコガネDasylepida ishigakiensisと比較し,生態や防除対策に関して論議する.
著者
湯川 淳一 宮田 正
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, 1999-12-25
被引用文献数
1
著者
岡本 素治
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.263-275, 2011-10-05

ヒラズゲンセイの配偶システムについて,羽化脱出直後からの行動観察に基づいて概要を明らかにし,あわせて生活史に関して得られた知見を報告し考察した.ヒラズゲンセイはキムネクマバチに寄生し,成虫は,長い擬蛹期と蛹期を経て,近畿地方では5月の末から6月の中旬に出現する.羽化してクマバチ巣から出ると,雄は特徴的な姿勢をとり,恐らくフェロモンを放出して雌を呼ぶ(コーリング行動).雌は,羽化脱出してしばらくすると飛び立ち,雄のいる巣を探索する.数10m離れた遠方から匂いを頼りに雄の周辺に飛来するのは容易なようであるが,そこから雄がいる巣の場所に到達するには時間がかかる.特に,雄がコーリング行動を止めると,雄のそばに到達するのに要する時間は著しく増大する.雌が雄のそばに至ると交尾が行われるが,通常のマウンティングに先立ち,雄が雌の上に逆向きに重なる特異な行動パターン(「逆マウント」と名付けた)が見られた.交尾がすむと,雌は産卵のためにクマバチ巣内に侵入しようとするが,クマバチによるさまざまなレベルの抵抗を受ける.侵入・産卵に成功した雌は,巣坑内で卵を防御する位置にとどまる.雄も雌に続いて巣坑内に侵入するが,その後も午前中は巣坑外に出てコーリングを行う.2週間程度で孵化した1齢幼虫は,クマバチの毛に大腮でしがみつき,分散していく.トウネズミモチの花の雄蘂の上で訪花活動を行うクマバチを待つヒラズゲンセイの1齢幼虫を発見し報告した.
著者
那須 義次 村濱 史郎 坂井 誠 山内 健生
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.89-97, 2007-12-25
参考文献数
33
被引用文献数
2

2002年から2006年にかけて,日本各地の鳥類の巣・ペリットおよび哺乳類の糞を調査し,ヒロズコガ科ヒロズコガ亜科に属する4種の蛾の発生を確認した.イガが島根県出雲市と大阪府河内長野市のツバメの巣,ウスグロイガが大阪府寝屋川市のハイタカのペリット,マエモンクロヒロズコガが愛媛県宇和島市のシジュウカラの巣,長野県飯綱町のノスリのペリット,小笠原諸島父島のイエネコの糞および鹿児島県奄美大島のイエネコかイヌの糞,アトキヒロズコガが和歌山県橋本市の雑木林に設置したハイタカのペリットを用いたトラップから羽化した.本報告は,日本においてシジュウカラの巣,鳥類のペリットおよび肉食哺乳類の糞から発生した蛾の初めての記録となった.幼虫はいずれも巣・ペリットおよび糞中のケラチン源(羽毛,毛など)を摂食していると考えられた.今回の調査結果と文献記録から市街地に造られたスズメ,コシアカツバメ,ツバメとカワラバトの巣が毛糸や毛織物害虫のイガの野外における重要な発生源であり,こられの巣からイガが家屋内に侵入することが推察された.
著者
永幡 嘉之 越山 洋三 梅津 和夫 後藤 三千代
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.104-112, 2013-04-05

電柱から回収されたカラスの巣から,ハナムグリ亜科の空の土繭2個と幼虫の死体1個体を発見した.この昆虫種および巣の持ち主の鳥種を同定するため,土繭の中に残っていた蛹殻,幼虫の死体,および巣材からDNA試料を抽出した.昆虫種については,ミトコンドリアDNAのCOI領域を分析対象とした.まずコウチュウ目用のユニバーサルプライマーセットを用いてPCRを行い,その後ダイレクトシーケンス法でPCR産物の塩基配列779bpを決定することで種同定した.鳥種については,ミトコンドリアDNAのチトクロームb領域を分析対象とした.ハシブトガラス,ハシボソガラス,ミヤマガラスの各種に特異的なプライマーと全種に共通なプライマーを用いてPCRを行ったのち,そのPCR産物のポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い,増幅されたバンドの鎖長でカラスの種類を判定した.その結果,土繭と幼虫の死体の計3個体は全てアカマダラハナムグリであり,巣の主はハシボソガラスであることが判明した.また,これらのアカマダラハナムグリ3個体で2つのハプロタイプが識別されたことから,少なくとも2個体のメス成虫がこの巣に産卵したことがわかった.アカマダラハナムグリは,これまで猛禽類など動物食性鳥類の比較的大型の巣内で幼虫が腐植土や雛の食べ残しを餌として発育することが知られていたが,雑食性で比較的小さい巣を作るハシボソガラスの巣も繁殖資源として利用していることが,今回はじめて明らかとなった.
著者
八尋 克郎 亀田 佳代子 那須 義次 村濱 史郎
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.15-23, 2013-01-05

滋賀県琵琶湖の竹生島でカワウの巣の昆虫を調査したところ,27種に属する466個体の昆虫類が採集された.鞘翅目が最も多く,すべての昆虫類の35.1%を占めた.鞘翅目のうち個体数の多い上位4科はゾウムシ科,コブスジコガネ科,ガムシ科,カツオブシムシ科で,合計個体数が148個体,全鞘翅目の90.8%を占めた.カワウの巣の昆虫相は主に生態系の腐食連鎖系に属する腐食性昆虫で構成されることが明らかになった.チビコブスジコガネ(コブスジコガネ科)は48個体確認されており,巣内の幼鳥の古い死体やペリット,食べ残しなどの分解者として重要な役割を果たしていると考えられる.
著者
横田 智 山尾 僚 鈴木 信彦
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.252-263, 2012-10-05

ワーカー多型の進化とその生態学的意義を解明するために,ワーカーに二型(メジャーおよびマイナーワーカー)がみられるオオズアリの分業体制を定量的に解析すると共に,メジャーの重要性が高い餌条件下で,カースト比やメジャー形態の可塑的変化が生じるのかを検証した.室内でサイズの異なる餌(大きい餌:フタホシコオロギ成虫,小さい餌:大きい餌を凍結粉砕したもの)を与え,餌場に現れたワーカーの個体数やメジャー比,行動様式,餌の解体の有無などを観察した.大きな餌を与えた場合,メジャーが餌場に多く現れ,マイナーが運搬行動に従事し,メジャーが解体行動に従事するという明確な分業がみられた.メジャーがいるコロニーでは,ほとんど場合餌が解体されたのに対し,メジャー不在のコロニーでは解体が生じたのはわずかであり,いずれも女王によるものであった.63日間,大きな餌を与えたコロニーと小さな餌のみを与えたコロニーのメジャー比及びメジャーの頭幅を比較したところ,メジャー比には違いはみられなかったが,頭幅には餌の大きさに相関した違いが生じた.腹部に栄養を貯蔵したメジャーがいるサブコロニー,貯蔵していないメジャーがいるサブコロニー,メジャーがいないサブコロニーをそれぞれ飢餓条件に置いて生存率を記録した結果,貯蔵したメジャーがいるコロニーが最も生存期間が長かった.以上の結果から,オオズアリの採餌におけるワーカーの明確な分業体制とメジャーによる食物貯蔵機能が明らかになり,メジャー形態の可塑的変異も確認された.メジャーカーストは餌の解体や栄養貯蔵に重要な役割を担っており,餌資源の獲得や維持に大きく貢献していると考えられた.
著者
高橋 佑磨 渡辺 守
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-17, 2008-03-25
被引用文献数
2

アオモンイトトンボの雌には,雄に似て鮮やかな青緑色の個体(雄型雌)と,隠蔽的な茶色の個体(雌型雌)の2型が出現する.この色彩2型に対する雄の配偶者選好性は学習によって可逆的に変化するとされてきたが,どのような経験が学習に関与するのかは明らかにされていなかった.羽化直後から雌と接触させずに飼育したアオモンイトトンボの雄(未経験雄)に対し,雄型雌と雌型雌を呈示する二者択一実験を行ったところ,雄の選択に偏りは認められず,雌に対する雄の選好性に生得的な偏りはないと考えられた.次に,未経験雄を,午前中,1頭の雌とともに小さなケージに入れ,その日の午後,または翌朝に同様の二者択一実験を行った.同居中にその雌と交尾した雄は,午後の二者択一実験で,同居していた型と同型の雌を選択したが,雌の拒否のために交尾できなかった雄の選択性には偏りが認められなかった.また,翌朝に行った二者択一実験では,同居中に交尾した雄の選択性に偏りが認められなくなった.したがって,雌の色彩2型に対する雄の選好性は,交尾の経験により変化し,一晩で消滅することがわかった.
著者
村田 浩平 土屋 守正 増島 宏明
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.75-87, 2007-12-25

太平洋上空を浮遊する昆虫相に関する調査をこれまで報告例のない1月から3月にかけて東海大学海洋調査実習船望星丸により1999年,2002年,2003年の3航海実施するとともに,独立行政法人海洋研究開発機構が運行する海洋地球研究船みらいにより2005年に1航海実施し,以下のような結果を得た.1.全航海で得られた海上を浮遊する空中移動性昆虫の目別個体数は,多い順にハチ目,ハエ目,カメムシ目,チャタテムシ目,アザミウマ目,コウチュウ目であり,そのほとんどが体長1mm前後の微小な昆虫であった.2.得られた昆虫の個体数は,主な分散源と考えられるオーストラリア大陸やニューギニア島近海で多かった.また,陸地から400km以上離れた海上で得られることもあったが,多くが陸地から数十キロ以内で得られた.3.海洋上空で昆虫が得られる条件として,最も近い島から風が吹いていること,海洋上空で昆虫が得られる傾向が見られた.また,風速との関係では無風時,強風時には得られない傾向が見られた.4.航路によって得られる昆虫の個体数には違いが見られ,日本から南東への往復航路では他の航路に比べて少ない傾向が見られた.5.イチジクコバチ科の1種は,ニニーゴ島沖120kmの海上で得られ,コバチ上科の1種,アザミウマ科の1種は,ニューギニア島から40km離れた海上で生存状態で得られていることから,これらの種は,島嶼間を分散する可能性があることが示唆された.6.港に停泊中に得られた昆虫の目構成は,海洋上空とは異なり,ハエ目,カメムシ目,ハチ目の順で多く,環礁で少なく火山島で多い傾向が見られた.7.甲板では,アカアシホシカムシ,ヒメアケビコノハ,トゲハネバエ科の1種,ツヤウミアメンボ,ハネアリなどが得られ,これらは海洋島が点在する海域では,島嶼間を分散する能力を持つことが示唆された.
著者
石田 直人 吉安 裕
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.55-68, 2004-06-25

ナベブタムシAphelocheirus vittatusとトゲナベブタムシA.nawaeの生活環を前者は京都市の鴨川(賀茂川)で,後者は兵庫県三田市の武庫川での野外調査と京都市下鴨での飼育実験に基づいて考察した.ナベブタムシは調査河川の中流域では1年で1世代であるが,上流域では2年で1世代と考えられる.トゲナベブタムシも武庫川(中流域)では1年で1世代と推定される.両種とも成虫の寿命は少なくとも1年はあり,雌成虫は春期〜初秋に産卵すると思われる.ナベブタムシを長日(15時間照明9時間暗期)の3温度区で飼育し,卵から羽化までの発育所要日数から算出した有効積算温量は1,789日度(発育零点:10.2℃)で,トゲナベブタムシの長日4温度区での飼育結果から算出したそれは2,000日度(発育零点:8.2℃)であった.この2種の生活環は類似していた.また,本研究における2種の調査地の環境は,基本的に底質が中礫を含む砂質および細礫の河川で,pH値が7-10の溶存酸素が多く,流れが比較的速い場所であり,この2種の生息環境に顕著な違いはみいだせなかった.それらの地点には水生植物が生育し,ナベブタムシ類の餌となる他の底生無脊椎動物も豊富であった.
著者
新部 公亮
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.96-104, 2012-04-05

『どくとるマンボウ昆虫記』は,多くの若い昆虫学者にとって,昆虫学を志すきっかけとなった名作である.その作者である北杜夫氏は,2011年10月24日に84歳で亡くなられた.北杜夫氏の追悼の意味も込めて,一風変わった博物館施設である「マロニエ昆虫館」の人文学的展示法と「どくとるマンボウ昆虫展」について紹介した.2006年に開設された「マロニエ昆虫館」は,栃木県県民の森内の遊休施設を利用した展示施設である.その人文学的展示テーマの中から今回は,「ギリシャ神話の中の昆虫たち」と「ことわざ・格言・言い回しの中の虫たち」の二つを紹介した.「どくとるマンボウ昆虫展」は,この人文学的展示の延長であり,全国19会場で開催され,軽井沢会場では平成天皇もご覧になった.
著者
佐藤 隆士 鈴木 祥悟 槙原 寛
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.46-49, 2006-06-25
参考文献数
15
被引用文献数
1

Anthracophora rusticola Burmeister is a scarabaed beetle threatened about its decline in Japan. Recently, the founding of larvae or pupae of the beetle from the nest of raptors, especially Honey Buzzard Pernis apivorus Taczanowski, have been repeatedly reported. These founding imply that the beetle would specifically breed in the raptor's nest and that the decline of the beetle, might be caused by the reduction of the breeding of raptors in Japan. In this study, we surveyed two nests of Honey Buzzard to clarify the nest utilization pattern of the beetle. One of them had been confirmed to be annually used by raptors for their breeding, and the other seemed not to be used by raptors recently. One dead body of adult and 23 cocoon shells of the beetle were discovered from the former nest. All cocoon shells were found from lower part of the nest where was relatively dry compare to upper part. None was found from the latter nest. We discussed breeding pattern of beetles on raptors nests.
著者
宋 一〓 山根 爽一 何 鎧光 陳 文雄
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.33-45, 2006-06-25
参考文献数
48
被引用文献数
1

タイワンハリナシバチ(Trigona ventralis hoozana)と台湾産トウヨウミツバチ(Apis cerana ssp.)の地理的分布を,過去の文献・標本と1994年から2005年にかけて著者らが全15縣と2市の42地点で行った調査に基づいて調べた.ハリナシバチは,台湾島を南北に貫く縦貫山脈の中部から南部にかけての山地で,海抜250〜2,500mの範囲の森林地帯で確認された.それらは,台中縣と南投縣,嘉義縣,高雄縣の4縣,22地点にわたる(高雄縣は今回正式に確認).一方,トウヨウミツバチは全島の海抜3,300m以下の地域に広く分布し,それはハリナシバチの生息域を完全にカバーしている.観察したハリナシバチの40巣(うち33巣は飼育巣)はすべて大樹の空洞に作られていた.最も高い所は20mであった.巣の発見された樹種はクスノキ科とムクロジ科,サルスベリ科,ニレ科,マツ科で,クスノキ科がもっとも多かった.ミツバチの22巣は,岩石の間隙がもっとも多く(約60%),大樹の根元の空洞や電柱や木箱などでも発見された.このように,ハリナシバチとミツバチは営巣場所の選択において,明確な違いを有し,両種の営巣場所をめぐる競争は,仮にあっても弱いものと推測された.ハリナシバチの分布が台湾島の山地に限られる理由は,台湾人が大陸から渡来して以来,特に戦前の日本統治時代から戦後の経済急成長期にかけて平地部や低山地の森林が伐採され,営巣に適する大樹が著しく減少したためと思われる。
著者
富沢 章 大宮 正太郎 福富 宏和 林 和美 石川 卓弥
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.3-14, 2013-01-05

シタベニハゴロモの野外における生態を調査した.本種は年1化で,卵越冬する.幼虫は5月下旬から8月初旬にかけて出現する.成虫は7月下旬から11月下旬まで認められ,寿命は3-4ヵ月と推定された.幼虫はおもに新梢部の枝や葉軸から吸汁するので枝先に多く,成虫は樹幹部に集団を形成する傾向が認められた.交尾および産卵行動は9月後半から11月まで認められ,夕方から夜間に行われた.卵は被覆物質で被われた卵塊としてシンジュの枝や幹の雨が直接当たらない下面に産み付けられた.幼虫・成虫を通しての寄主植物としてシンジュとセンダンが確認された.また,エゴノキとアカメガシワでは,成虫においてのみ樹幹部からの吸汁が認められた.
著者
大野 和朗 山口 大輔 マリヤナ ニナ 嶽崎 研 嶽本 弘之
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-9, 1999-03-25
被引用文献数
2

マメハモグリバエの幼虫寄生蜂4種6系統について, 増殖効率を明らかにするとともに, 羽化蜂を効率的に回収するためペットボトル容器を用いた羽化蜂回収容器の有効性を検討した.1) 飼育箱に一定数の雌蜂を放飼し, 数百頭の寄主幼虫を与えた場合, 雌蜂あたり次世代数には種間で有意な差は認められなかった.2) しかし, 性比はC. pentheus, D. isaeaおよびH. varicornisで雄に偏り, 雌の割合が低かった.対照的に, N. formosaでは極端に雌に偏り, 雄はわずかであった.3) D. isaea(DI-KGS)の放飼雌数を5, 10, 20頭に変えて約800頭の寄主を供試した場合, 次世代の生産に利用された寄主の割合は20頭供試区でも27%と低く, 寄主体液摂取の対象となった寄主すなわち死亡幼虫の割合は30∿50%と高かった.4) ハモグリミドリヒメコバチN. formosaの産雄性単為生殖系統(NF-KHO)および産雌性単為生殖系統(NF-KGS)の成虫数百頭を飼育箱に維持しながら, 数百頭の寄主を供試した場合, 前者の次世代数は後者の2倍近い値となった.しかし, 前者の性比は雄に偏り, 後者ではほとんどの個体が雌であった.5) ペットボトルを用いた羽化蜂回収容器にはいずれの種も80%以上の個体が試験管に回収されたが, その割合はC. pentheusで有意に低かった.6) 以上の結果から, N. formosaの産雌性単為生殖系統が大量増殖に最も適していると考えられた.
著者
前藤 薫 槇原 寛
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.11-26, 1999-03-25
被引用文献数
9

茨城県北部にある老齢自然林と皆伐後の経過年数の異なる二次林にマレーズトラップを設置して, 昆虫相を比較した.その結果, 林齢にともなう昆虫の種数と種組成の変化は, 昆虫のグループによって大きく異なることが分かった.カメムシ類とスズメバチ類では, 森林の遷移にともなう種数や種組成の明瞭な変化は認められなかった.チョウ類の種数は, 若い二次林に最も多く, 古い二次林ではやや減少した.また, 林齢によって種組成が変化した.カミキリムシ類は古い二次林で最も多くの種が捕獲され, 種組成は森林の遷移に応じて変化した.一方, クワガタムシ類は種数, 個体数ともに老齢自然林が最も豊富であった.林業地域において森林昆虫の多様性を保全するには, 昆虫の生息場所としての二次林の役割と限界について十分に理解する必要があろう.
著者
長谷川 克 渡辺 守
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.105-114, 2008-09-25
被引用文献数
1

翅に色彩2型を生じるモンキチョウの雌に対する雄の配偶者選択を,雌が未交尾の場合と既交尾の場合に分けて調べた.この選択実験において,雄とモンシロチョウの雌も本種雌の2型とともに呈示し,それらに対する行動も記録した.処女雌を呈示したとき,雄は飛来時に黄翅型を選好し,どちらの翅型に対しても同様にしつこく求愛した.一方,既交尾雌を呈示したときの飛来時の選好性には偏りが見られず,飛来後の雄は白翅型雌に対してしつこく求愛した.本種雄は雌の交尾経験の有無によって,配偶者選択を変化させていることが示唆される.雌の翅のみを呈示した場合,雌の交尾拒否行動を模した翅モデルは効果的に雄の求愛行動を減少させたが,この場合においても雄は黄翅型雌の翅を選び,求愛のしつこさは2型で変わらなかった.このことは,翅の表面という視覚的な刺激のみでは2型間への雄の好みを変更させられないことを意味している.呈示した雄やモンシロチョウの雌は飛来時,あるいは初期の行動段階において雌と区別されており,これらの個体の存在が雄の配偶者選択に影響している可能性は低い.
著者
丸山 宗利 大野 豪
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.112-115, 2011-04-05

Coelophora inaequalis (Fabricius, 1775) is recorded from several localities on the islands of Okinawa-jima and Ishigaki-jima, Okinawa, Japan for the first time. This species is considered to be currently introduced from overseas and possibly already naturalized in these islands. Several color forms are known in this species, but only two forms, Tortoise-shell and Nine-spotted forms, have been found the populations in Okinawa.
著者
村田 浩平 松浦 朝奈 岩田 眞木郎
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-10, 2007-03-25

ヒメイトアメンボは,水田に生息する水生カメムシの1種である.本研究では,本種の飼育条件下における捕食行動を明らかにするとともに,餌昆虫の1つであるセジロウンカに対する天敵としての能力を評価すること,長日条件下(16時間明期,8時間暗期)において,23℃,25℃,30℃,35℃の異なる飼育温度における本種の繁殖能力を評価した.餌昆虫の密度に対する本種の機能の反応は,セジロウンカ,キイロショウジョウバエいずれを供試した場合も飽和型を示し,セジロウンカに対する日あたり攻撃量の最大値は1.65個体,キイロショウジョウバエに対しては1.48個体であった.捕食率(捕食数餌/密度)は,両餌昆虫とも捕食数の増加とともに減少した.セジロウンカを供試した場合の寄主発見能力,攻撃摂食時間,攻撃摂食時間から予想される日あたり攻撃量の限界値は,キイロショウジョウバエを供試した場合に比べて高かった.本種の産卵行動は,水面上や容器壁面,キムワイプ上に1卵ずつ行われた.本種の産卵前期間は,およそ1〜2日であった.産卵期間は,23℃区で10.5日,25℃区で20.8日,30℃区で19.5日,35℃区で7.5日となり,25℃区と30℃区における産卵期間は23℃区と35℃区のそれらとの間に有意差は認められなかったものの,後者では産卵期間が短くなる傾向が示された.1メスあたりの平均総産卵数は,23℃区で100.8卵,25℃区で186.2卵,30℃区で223.2卵,35℃区で55.4卵となり,23℃区および35℃区における1メスあたりの平均総産卵数は25℃区,30℃区に比べて少ない傾向を示した.卵から成虫までの生存率は,25℃区で最も高く,次いで23℃区,30℃区の順で35℃区は,全卵が孵化しないか孵化失敗により死亡した.本種の卵期間は,23℃区で8.7日,25℃区で7.4日,30℃区で5.9日であり,飼育温度が高くなるにつれて有意に減少した.幼虫期は,通常5齢までであったが,25℃区,30℃区において各1個体,計2個体のみ幼虫期が6齢の個体が見られた.1齢から終齢までの幼虫期間は,23℃区で15.6日,25℃区で13.1日,35℃区で10.9日であり,温度が高くなるにつれて有意に減少した.