- 著者
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村上 明美
喜多 里己
丸山 彩香
- 出版者
- 神奈川県立保健福祉大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2009
本研究は、熟練開業助産師が後進の助産師に対して行っている卓越した「わざ」の伝承を、D. Leonard & W. Swap(2005)が提唱するディープスマート理論に基づいて分析し、「わざ」伝承の緒相を明らかにすることを目的とした。対象は、熟練開業助産師3名と、そこに雇用されている後進の助産師7名であった。対象者にそれぞれ2回の半構成的面接を行い、面接の様子をフィールドノーツに記載するとともに、対象の許可を得てレコーダーに録音し、逐語録を作成した。分析は、逐語録とフィールドノーツの内容を、まず、ディープスマート理論の構築・形成・選別・移転の段階に沿って分類し、コーディングを行い、「わざ」伝承の視点から内容分析を行った。その結果、以下のようなストーリーラインが描写できた。後進の助産師は「熟練開業助産師に惚れ込む」ことから助産所の一員となって、熟練開業助産師と場や感覚を共有するようになっていた。さらに、後進の助産師は「熟練開業助産師から現場を任される」ことや、たとえ熟練開業助産師が不在であっても「熟練開業助産師が存在しているかのように実践できる」と感じることで、熟練開業助産師の卓越した「わざ」が自身に伝承されていると実感していた。卓越した「わざ」は、HOW TOとしては伝えられておらず、特に、出産の場においては、後進の助産師が[産婦の産もうとする力]と[胎児の生まれようとする力]に熟練開業助産師とともに徹底して寄り添うことを通して、熟練開業助産師の「信念」「責任」「真摯な姿勢」「判断の見事さ」等の卓越性を共有していた。さらに、出産終了後に後進の助産師が熟練開業助産師とともに「出産を振り返る」ことは、相互に共感的な気づきが生じ、熟練開業助産師の卓越した「わざ」が後進の助産師に伝承される場となっていた。