著者
行實 志都子 八重田 淳 若林 功
出版者
神奈川県立保健福祉大学
雑誌
神奈川県立保健福祉大学誌 : human services (ISSN:13494775)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.3-13, 2017

目的:本研究は、神奈川県における医療と介護の連携促進要因を探ることを目的とした。方法: 神奈川県医療ソーシャルワーカー協会(MSW)、神奈川県精神保健福祉士協会(PSW)、神奈川県介護支援専門員協会(CM)の協会員各150名を無作為抽出し、450名を対象とした郵送無記名自記式質問紙調査(2016年3月28日~4月15日)を実施した。主な調査内容は、基本属性、国の方策や地域の状況・疾患・医療体制等の知識、自分の周囲の連携体制、医療機関連携における課題、専門職としての役割意識である。データ分析には相関分析及び分散分析を用い、医療と介護の連携要因と傾向を探った。結果: 回答者140名(回収率31%)の職種全てにおいて項目間の高い相関が示された。特にMSWとPSWにおいての違いが顕著に見られた。考察: 本調査結果から連携促進要因には、①国の動向理解②疾患の正しい理解③連携への苦手意識の克服④スーパービジョン・コンサルテーションのシステム整備⑤クライエント中心にした連携意識が重要である。これらを踏まえ自分に何ができるかという視点や意識を少しでももちながら、その気持ちを共有でき一緒に何かを始められる仲間探しから連携の一歩が始まると考えられた。
著者
長谷 龍太郎 高橋 香代子 友利 幸之介
出版者
神奈川県立保健福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,回復期リハビリテーション病棟に入院する脳卒中片麻痺患者を対象に,ADOCを用いたトップダウン型作業療法の効果について,無作為化比較試験によって検証した.54名の脳卒中片麻痺患者をランダムにトップダウン群とボトムアップ群に振り分けた.成果指標は,2ヶ月目でSF-36,FIM,ブルンストロームステージ,退院時に患者満足度,入院日数とした.介入前後の比較では,両群とも多くの項目で有意な改善が認められたが,両群間の比較では有意差は認めれなかった.ただしトップダウン群では,SF-36の全体的健康感と日常役割機能(精神)において効果的である可能性が示唆された.
著者
黒澤 千尋 小池 友佳子 白濱 勲二 藤田 峰子 玉垣 努
出版者
神奈川県立保健福祉大学
雑誌
神奈川県立保健福祉大学誌 = Journal of Kanagawa University of Human Services (ISSN:13494775)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.71-81, 2023-03

【目的】コロナ禍における活動自粛により運動機能の低下をきたした地域在住自立高齢者の心身機能の経時的な変化を明らかにするため、これまで実施した身体機能測定会の調査結果を分析した。【方法】2019年度は対面開催、2020年度および2021年度は紙面での調査を行い、2019年度時点でロコモ度0であった26名分を対象とした。調査項目は、ロコモ25、基本チェックリスト、外出頻度、運動頻度、コロナフレイル、コロナストレス、SF-8TMとした。また、2021年度時点でロコモ度1以上の対象者を低下群、ロコモ度0の対象者を維持群とした。全体および低下群・維持群における3年間の変化について検討した。【結果】コロナ禍においても、全体として外出頻度や運動頻度は変わらず、栄養、口腔機能、認知機能、抑うつ気分も維持していた。一方で、運動機能低下や閉じこもりの傾向が強く、2021年度は日常生活関連動作への影響が示唆された。低下群は全体と同様の傾向を示したが、維持群では全ての項目で有意な差は認められなかった。【結論】コロナ禍による活動自粛は、運動機能の低下や閉じこもりの傾向を助長し、日常生活関連動作に影響している可能性が示唆された。
著者
長山 洋史
出版者
神奈川県立保健福祉大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は,脳卒中患者に対する回復期リハビリテーション(以下,リハ)における適切なリハ密度(リハ時間/日:1日のリハ時間)を費用効果の視点から検討することであった.第1フェーズとして,レセプトデータを用いて,高密度リハ(1日6単位以上,1単位20分)の退院後医療費や再入院率への影響を回帰不連続デザイン,自然実験にて検討した.その結果,回復期リハ病棟における高密度リハは,低密度リハと比較し,医療費や再入院率の減少には影響しないことが明らかとなった(長山ら.2019,Nagayama et al. 2021).患者特性に応じたリハ密度の検討が重要であることが,今後の課題として明らかとなった.
著者
五味 郁子
出版者
神奈川県立保健福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

地域で暮らす生活保護受給者や高齢者は、食生活や身体状況、生活状況の変化による低栄養の予防が必要である。一方、地域には、住民の食生活をサポートする地域資源が多様に存在している。そこで本研究は、個別の食生活状況に応じて、必要な食生活サポート地域資源(サービス)をコーディネートするインターネット活用型システム「食生活サポートナビ http://shoku-support.com」を構築した。
著者
加藤 絵理子
出版者
神奈川県立保健福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

神奈川県の地域包括支援センターにおいて、 一般高齢者が対象の介護予防教室を開催し、講義を行った後に参加者と講師が一緒に給食を食べてから解散する共食実施コースと、講義を行った後すぐに解散する共食未実施コースを設定し、参加者の健康意識の違いを評価した。実施コースは、未実施コースよりも「食事内容を見直すことができた」「体調を見直すことができた」「教室参加者同士の交流ができた」と回答した者の割合が多かった。
著者
村上 明美 喜多 里己 丸山 彩香
出版者
神奈川県立保健福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、熟練開業助産師が後進の助産師に対して行っている卓越した「わざ」の伝承を、D. Leonard & W. Swap(2005)が提唱するディープスマート理論に基づいて分析し、「わざ」伝承の緒相を明らかにすることを目的とした。対象は、熟練開業助産師3名と、そこに雇用されている後進の助産師7名であった。対象者にそれぞれ2回の半構成的面接を行い、面接の様子をフィールドノーツに記載するとともに、対象の許可を得てレコーダーに録音し、逐語録を作成した。分析は、逐語録とフィールドノーツの内容を、まず、ディープスマート理論の構築・形成・選別・移転の段階に沿って分類し、コーディングを行い、「わざ」伝承の視点から内容分析を行った。その結果、以下のようなストーリーラインが描写できた。後進の助産師は「熟練開業助産師に惚れ込む」ことから助産所の一員となって、熟練開業助産師と場や感覚を共有するようになっていた。さらに、後進の助産師は「熟練開業助産師から現場を任される」ことや、たとえ熟練開業助産師が不在であっても「熟練開業助産師が存在しているかのように実践できる」と感じることで、熟練開業助産師の卓越した「わざ」が自身に伝承されていると実感していた。卓越した「わざ」は、HOW TOとしては伝えられておらず、特に、出産の場においては、後進の助産師が[産婦の産もうとする力]と[胎児の生まれようとする力]に熟練開業助産師とともに徹底して寄り添うことを通して、熟練開業助産師の「信念」「責任」「真摯な姿勢」「判断の見事さ」等の卓越性を共有していた。さらに、出産終了後に後進の助産師が熟練開業助産師とともに「出産を振り返る」ことは、相互に共感的な気づきが生じ、熟練開業助産師の卓越した「わざ」が後進の助産師に伝承される場となっていた。