著者
大出 恭代 並木 美奈 川名 孝幸 喜納 勝成 中澤 武司 川島 徹 三宅 一徳 佐々木 信一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.25-31, 2022-01-25 (Released:2022-01-25)
参考文献数
13

病院診療において,有症状者COVID-19疑い患者の診断検査と無症状病原体保有者のスクリーニング検査は区別して考えなくてはならない。今回我々は有症状でCOVID-19疑い患者の診断検査と無症状病原体保有者のスクリーニング検査を実施した2群について,抗原定量検査の有効性と問題点について検討した。対象は2020年11月から2021年5月の期間で,RT-PCR検査とSARS-CoV-2抗原定量検査を同日提出された有症状COVID-19疑い患者群277検体,無症状者スクリーニング検査群1,781検体の合計2,058検体について後ろ向き解析を行った。その結果,有症状COVID-19疑い患者群では抗原定量値 ≥ 0.36 pg/mLを陽性とした場合は感度95.9%,特異度80.4%,無症状者スクリーニング検査群では抗原定量値 ≥ 0.83 pg/mLを陽性とした場合は感度100%,特異度99.5%であった。今回の解析で,抗原定量検査は無症状者のスクリーニング検査としては非常に高い有効性が認められたが,一方で同検査を有症状患者の診断目的で用いる場合は,感度・特異度が若干低下するため,その特性をしっかりと理解し,臨床症状,画像診断,PCR検査や抗体検査を組み合わせた総合的な判断が必要である。