著者
嘉原 優子
出版者
中部大学人文学部
雑誌
人文学部研究論集 (ISSN:13446037)
巻号頁・発行日
no.14, pp.191-211, 2005-07
著者
嘉原 優子
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

バリ(インドネシア)とラオスにおいては、公的教育機関や私的サークルにおける一対多の舞踊伝承形態を、従来の師と弟子といった一対一の関係の教授形態と比較し、民族舞踊を中心とした伝統芸能の伝承システムの変化について考察した。バリでは、30代から70代の6名の女性舞踊家へのインタヴュー内容を比較検討し、各世代の女性舞踊家の舞踊習得過程を明らかにした上で、民族舞踊の伝承システムの現代的変容が伝統文化に与えた影響について考察した。ラオスでは、国立音楽舞踊学校の現状を調査し、卒業生たちの舞踊家としての将来が、今後の観光業の発展に支配さていることを明らかにした。しかしながら、現時点では、バリでみられるような新しい観光文化の創出には至っておらず、現状では近隣諸国における観光産業の模倣としてのラーマーヤナ復活にとどまっている。日本では、東美濃地域の農村歌舞伎と奥三河花祭りの伝承の現状を調べた。農村歌舞伎は、戦中戦後の中断をはさんで、近年、盛んに演じられるようになっているが、かつて村人の最大の娯楽のひとつであった歌舞伎が、過疎化・少子化の進む現状にあって、行政から地域活性化の機能を担わされていることがわかる。また、奥三河の花祭りでは、過疎化の進む地域を超えて、地域外の伝統芸能に関心を抱く人々によっても伝承され、その一部の人々は実際に祭礼を支えていることが確認された。農村歌舞伎、花祭りのいずれもが、学校教育との関係を築き上げ、教育の一環として地域の伝統を伝承していこうと試みている。日本と、バリ・ラオスにおける民族舞踊伝承の現状における相違は、前者が地域に伝わる伝統芸能をもっぱら地域活性化のために活用しようとしているのに対して、後者は同じく地域の活性化を目的としてはいても、それが現金収入を得るためといった個人的な目的のための手段としても捉えられている傾向が強い点にある。
著者
藤井 知昭 嘉原 優子 寺田 吉孝 鈴木 道子 高橋 昭弘 樋口 昭 TOーNGOC Than AMPHAY Kinda 呉 学源 高 立士 福岡 正太 THANH ToーNgo KINDAVONG Am 塚田 誠之
出版者
中部大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

ヴェトナム1)従来調査を継続してきた都市的芸能に関してさらに資料の蓄積を行った。中でも、比較的資料の少なかったハット・トゥオン、カイ・ルオンについては、資料の充実を図ることができた。とりわけハット・トゥオンについては、現在上演可能なレパートリーのほぼ全体をつかみ、またハット・チェオとの相違点や特徴などをおさえることが出来た。2)文化情報省管轄の演劇研究院(Vien San Khau)の院長・スタッフ及び当学院所属の芸術家との研究的交流を行い、今後の調査研究の一層の展開にとって条件作りとなった。ラオス1)中央部・南部の歌謡「ラム」について、さらに多くの事例の蓄積ができた。中央部を中心に伝承されている伝統的な歌謡形式「ラム・クー・ラム・コーン」については、現地研究者との協力による歌詞の訳詞作業も進展し、また形式概念・演唱形式についてもほぼ整理できる段階になった。2)南部諸地方の「ラム」についても、事例をかなり集めることができた。各地域の代表的・典型的な歌については、網羅されつつあるが、さらに綿密な事例の収集が望まれる。3)少数民族の歌謡・芸能については、特に南部地域に関して、現地研究者との交流により新たな情報を得ることができたが現地調査は未実施であり、今後の現地調査が期待される。4)文化情報省直属のInsitute of Research on Cultureの所長及び、研究員との研究的交流が進展し、今後の共同研究のため基盤を一層強めることができた。