著者
藤井 知昭 三浦 基嗣 長谷 徹太郎 敦賀 健吉 森本 裕二
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.36-39, 2019-02-25 (Released:2019-03-12)
参考文献数
14

複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)はアロディニアを伴うことが多い.アロディニアは慢性痛患者の生活の質を損ねるだけでなく,治療に難渋することも多い.抑肝散は動物実験において抗アロディニア作用を有することが示されている.今回,抑肝散の内服継続が困難なCRPS症例に対して七物降下湯を投与したところ,抑肝散と同様の抗アロディニア作用が得られた.七物降下湯は,抑肝散の抗アロディニア作用の中心的生薬と考えられる釣藤鈎を含んでおり,抑肝散と同様の抗アロディニア作用を有する可能性がある.
著者
藤井 知昭 陳 興賢 高 立士 馬場 雄司 塚田 誠之 鈴木 道子 高橋 昭弘 樋口 昭 GAO Lishi LIANG Youshou 陣 興賢
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

1.当調査の目的と課題について文部省科学研究費補金によって行なわれた昭和61年度の「インド東北部・ブータン民族音楽学術調査」および平成2年度の「ブータン民族音楽学術調査」に続き,チベット・ビルマ語系諸族を中心とした,いわゆる照葉樹林文化圏を軸とする音楽文化に焦点をあてることを目的としている。この目的の為,当調査では,中国雲南省及びこの地域と民族分布を共通させるタイ北部をその対象とした。過去10年間にわたって,クロスカルチュラルな視点からパキスタン北部よりブータンに及ぶ大ヒマラヤ圏における音楽文化の調査を継続し,音楽人類学の方法論によって,諸民族の文化的アイデンティティー,文化変容,動態等についてのデータを蓄積してきた。今回の調査は,この従来の調査による蓄積との比較研究をも目的とし,諸民族に伝承される音楽文化に関する情報とデータの充実化によって,音楽の伝播と変容の課題に新たな展開をもたらそうとするものである。2.新たに集積されたデータについて北部タイにおいては,チェンマイ近郊のリス族の村落と,チェンライ県に分布するアカ族のいくつかの村落を中心に,調査を行った。特にアカ族については,メーサロン地区の数ヵ村について,それぞれ楽器,舞踊,歌の特徴を押さえると共に,チェンライ県メースアイ郡のアカ族のブランコ祭りの全容を,記録することができた。タイ国内のアカ族は,ウロ,ロミ,パミの3集団に分かれるが,これら集団の差異の概要を押さえると共に,今回は,中でもウロアカの持つ音楽文化の実態を明らかにすることができた。当初,北部タイ山地に分布する,チベット・ビルマ語系の民族のうち,カレン族,リス族,アカ族に焦点を定めていたが,アカ族特有のブランコ祭りの調査が中心となった為,得られたデータは,アス族のものが中心となった。しかし,従来の調査によって得られた中国雲南省に居住する同じ系統のハニ族の文化との共通性および,変容に関する比較を通して,アカ族の民族音楽研究上多くの成果をあげることができた。3.成果の意義と今後への展望研究分担者は,それぞれ専門をする分野が民族音楽,比較文学(フォークロア),歴史と儀礼および芸能文化というように学際的であるため,フィールドで集積されたデータも,多面的に分析され,それぞれの分野での解明に利することとなった。民族音楽の分野では主としてタイ北部のアカ族の二大年中行事に一つブランコ祭の詳細なデータとアカ族の歌謡の概念とかなりの量の歌詞の採集を行うことができた。また,中国に関しても引き続き,イ語系,チベット・ビルマ語系語族の口頭伝承の語り物,及び婚礼習俗に関わる歌謡のデータを蓄積した。今回の調査で中国雲南省から移動したタイ北部山地に居住するアカ族が故地の文化を伝えている点が明らかとなり,これによって今後雲南省の比較研究を進展させる上で具体的な足がかりを得たといえる。また,これらの成果は,現地研究者との協力のもとで進められ,平成4年度は,この協力体制に基づいて,現地研究者を日本に招き,調査結果を共同で研究することが実現し,本格的な共同研究が緒についた。次回の調査として当調査隊はタイ北部及び中国西南部の両地域に加えてラオスを調査対象とし,東アジアから東南アジアに分布する諸民族の音楽文化の動態に関する調査を計画している。中国西南部を再度調査するのは,更にデータを蓄積充実するためであり,また,今回の調査で確立した現地研究者との学関交流を更に発展定着させるためである。更にラオスを対象地域に加えることにより,アカ族等中国から移動した諸部族に関する比較研究が一層充実し,多彩な成果を期待でき,ひいては中国西南部と東南アジア地域とのかかわりをもクリアーにすることが可能と考えられる。これらの調査を通じ,当プロジェクトは主としてヒマラヤ方面で行ってきた,「照葉樹林文化圏」の諸民族の音楽文化に関するデータ蓄積を,中国・東南アジア方面から充実させ得るて考えられる。
著者
藤井 知昭 嘉原 優子 寺田 吉孝 鈴木 道子 高橋 昭弘 樋口 昭 TOーNGOC Than AMPHAY Kinda 呉 学源 高 立士 福岡 正太 THANH ToーNgo KINDAVONG Am 塚田 誠之
出版者
中部大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

ヴェトナム1)従来調査を継続してきた都市的芸能に関してさらに資料の蓄積を行った。中でも、比較的資料の少なかったハット・トゥオン、カイ・ルオンについては、資料の充実を図ることができた。とりわけハット・トゥオンについては、現在上演可能なレパートリーのほぼ全体をつかみ、またハット・チェオとの相違点や特徴などをおさえることが出来た。2)文化情報省管轄の演劇研究院(Vien San Khau)の院長・スタッフ及び当学院所属の芸術家との研究的交流を行い、今後の調査研究の一層の展開にとって条件作りとなった。ラオス1)中央部・南部の歌謡「ラム」について、さらに多くの事例の蓄積ができた。中央部を中心に伝承されている伝統的な歌謡形式「ラム・クー・ラム・コーン」については、現地研究者との協力による歌詞の訳詞作業も進展し、また形式概念・演唱形式についてもほぼ整理できる段階になった。2)南部諸地方の「ラム」についても、事例をかなり集めることができた。各地域の代表的・典型的な歌については、網羅されつつあるが、さらに綿密な事例の収集が望まれる。3)少数民族の歌謡・芸能については、特に南部地域に関して、現地研究者との交流により新たな情報を得ることができたが現地調査は未実施であり、今後の現地調査が期待される。4)文化情報省直属のInsitute of Research on Cultureの所長及び、研究員との研究的交流が進展し、今後の共同研究のため基盤を一層強めることができた。
著者
小島 美子 山本 順人 桜井 哲男 八重樫 純樹 山口 修 藤井 知昭 樋口 昭
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

今、急速に衰減または変質しつつある日本の民謡をデータベース化するために、その基礎となる民謡分類法とデータベース化の方法を検討するのが本研究の目的である。I研究課題と研究経過 では、主に次のような研究経過について述べた。最初は通文化的な民謡分類の確立をめざしたが、これには問題が多いこと、また民謡のデータベース化に当たって情報検索に必要な項目を民謡分類は別の次元の問題であることがわかり、さし当たってデータベースの原データとしては文化庁の全国民謡緊急調査の調査票が適切であることがわかったため、これをもとにデータベース構築を考え、4葉の350曲についてのデータの試行作成を行った。IIには4項にわたって以上の経過を裏付ける研究報告を収めた。1日本の民謡分類法 では、日本の民謡分類を歴史的に検討し、文化庁の全国民謡緊急調査の分類法はその一応の帰結であることを明らかにした。2諸民族の民謡分類法 では、ベラウ、ハンガリー、アフリカなどの民族音楽をもとにした民謡分類について検討し、民謡の分類そのものが、それぞれの文化の性格の反映であり、通文化的分類法をたてることは難しいことを明らかにした。3民謡の検索 ではロシヤ、韓国の民謡をもとに、情報探索に必要な項目を検討した。4民謡のデータベース化 では、基本的な民謡データの分析をもとに、データ試行作成に至った諸段階について具体的に説明し、台帳案などを例示した。このようにして一応民謡データベースのデータ試行作成に至ったが、実際には5万曲以上と思われるぼう大な民謡をデータベース化するためには、すべての原データを確保できるかどうか、という問題も含めて、原データの情報をできる限り盛り込もうとするこの案が可能かどうかなど問題点も明らかになってきた。今後民謡のデータベース化についてはさらに共同研究を継続したいと考えている。