著者
四宮 克眞 田野 聡 高岡 克宜 野口 七恵 松村 幸治 濵 敬介 鶯 春夫 田岡 祐二
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1290, 2015 (Released:2015-04-30)

【目的】両側人工股関節全置換術後(以下THA)より不良姿勢を呈した症例に対し,姿勢修正のために腰椎と骨盤の分離および連動運動の観点から2週間運動療法を実施するも著変みられなかったため,身体イメージを修正する介入を実施したところ,静的姿勢に変化を及ぼしたので報告する。【症例提示】80代女性。2014年5月左 THA施行,同年8月右THA施行し,当院に9月下旬より入院し運動療法を施した。現在,歩行器歩行監視レベル。ROMは股関節屈曲,伸展,内転,外旋に著明な制限あり。背臥位では骨盤前傾,腰椎前弯位(ベッド面より2横指),立位では過度な骨盤前傾,腰椎前弯位(壁より3横指)を認め,中間位への矯正を指示すると腰椎前弯を助長する結果を招いた。そこで,身体イメージに崩れが生じていると仮説し,症例が描いている身体イメージを明確にするため,紙面上に立位の絵を描写させた結果,腰椎を最凸部にした円背姿勢を描いた。次に,セラピストが描いた腰椎前弯と中間及び後弯位の立位との比較を行った結果,後弯位が自身の立位と答えた為,身体イメージを修正する介入を実施した。【経過と考察】介入開始時,「お尻が出て猫背です。」と実際の姿勢と差がみられたため,視覚と体性感覚情報を用いた介入を行い,視覚情報では,腰椎前弯と中間及び後弯位を図示して,その差を言語表象させた。さらに端座位で各肢位を実演し,矢状・前額面から腰椎と骨盤との位置関係を言語表象させた。体性感覚情報では,背臥位,立位にて腰椎部にスポンジで圧刺激を行い同部位へ体性感覚情報に対する注意を増大させた後に,再度自動運動にて各肢位を再現させた。その結果,背臥位で腰椎・骨盤中間位(ベッド面と接し),立位で骨盤前弯位が減少(壁より1横指)した。本人も,「腰が以前みたいに前に反っているのではなく,しっかり背中がついている。」と改善を表す言語表象がみられた。今回,高齢の両側THA患者の静的な不良姿勢を身体イメージの修正により改善できたことを確認した。