著者
国本 佳範 西川 学
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.75-82, 2008-06-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
11

スクミリンゴガイの水田に入っての拾い取りによる捕獲と,水田内に設置した野菜トラップによる捕獲および水田周囲に設置した野菜トラップによる捕獲について,作業時間,捕獲効率を比較した.貝が少なかった水田を除き,拾い取りによる捕獲の作業時間は,10a当たり2時間以上を要し,最も捕獲量の多かった水田では約536分を要した.しかし,1回の拾い取りでの捕獲効率は全捕獲の68.3%に止まり,稚苗移植水稲での要防除水準まで貝密度を減少させるには複数回の拾い取りが必要であった.これに対し,水田内に設置した野菜トラップでは4回のトラップでの捕獲を行うことで要防除水準以下の密度まで貝を減少させることができ,10a当たりの作業時間は約418分だった.水田周囲に設置した野菜トラップでは小規模な水田では13回のトラップによる捕獲で,要防除水準以下の密度にまで貝を減少させることができた.10a当たりに換算した作業時間は約116分で,この方法により短時間で簡単に貝を捕獲できることが示唆された.
著者
国本 佳範 小山 裕三 印田 清秀
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.540-545, 2009-05

奈良県は露地での小ギクや二輪菊生産が盛んで、とくに小ギクは生駒郡平群町を中心に栽培面積約80 ha、生産量約3,600万本と全国でも有数の産地として知られている。このキクの害虫の1つにタバコガ類があり、とくにオオタバコガによる茎頂部の食害が大きな問題となっている。生産者は主に殺虫剤散布で防除しているが、以下のような理由から十分な効果が得られない場合が多い。(1)成虫が夜間に飛来し、茎頂部に1個ずつ産卵するため発見が難しい(2)幼虫は植物体に食入するうえ、移動が激しく、発生場所が特定しにくい(3)発生期がお盆や彼岸などの収穫繁忙期と重なるため散布作業が十分に行えない一方、オオタバコガ防除には殺虫剤に頼らない方法もある。たとえば、黄色灯の夜間点灯、合成性フェロモン剤による交信攪乱やネットによる圃場の被覆である。これらは、他の作物ではすでに実用化されている。筆者らは露地ギク栽培でのタバコガ類防除を目的に小規模な家族経営の生産者でも安価で簡単に設置できる新しいネット被覆法を開発した。これを平群町の小ギク栽培圃場に設置したところ、タバコガ類による被害を大幅に減少させ、殺虫剤使用回数も半減できた。本稿では、この新しいネット被覆法の概要を紹介するとともに、現地でのネット被覆栽培の普及状況やネット被覆から波及する露地ギクでの総合的害虫管理等の可能性について述べる。