著者
荒木 肇 藤井 崇
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.11-20, 2013-03-20
参考文献数
28
被引用文献数
1

新潟大学農学部村松ステーション(黒ボク土)で,プラスチックハウスでの土壌特性の変化とトマト収量に及ぼす不耕起とヘアリーベッチ(以下HV)マルチの影響を調査した.1998年10月5日にHVを5 kg/10aの密度で播種し,1999年4月にHV生育場所にハウスを設置し,5月13日に刈り倒して残渣マルチとした.ハウス内の 4 試験区に,台木'影武者'に接ぎ木した'桃太郎T93'を5月14日に定植し,9月30日まで栽培した.試験区は①耕起,②不耕起,③耕起後にHV を敷く(耕起-HV),および④不耕起にHV を敷く(不耕起-HV)の4種とした.プラスチックハウスへの不耕起とHV の導入について,土壌環境からみると,不耕起では高い土壌硬度を示すが,不耕起-HV では土壌硬度を低下させ,土壌3相の構成比率の変化を緩和することが明らかになった.トマト収量は耕起-HV で最大となり,ついで耕起と不耕起-HVで,不耕起では減少した.HV マルチはトマト生育初期にトマト植物体中の硝酸含有量を高め,それが生育促進と収量増加に結びつくと考えられた.
著者
落合 将暉 松尾 健太郎
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.83-89, 2022-06-20 (Released:2022-12-20)
参考文献数
14

キャベツ直播栽培における間引き作業の省力化を志向し,播種方法と間引き作業時期の違いが間引き作業時間およびキャベツの生育に及ぼす影響を調査した.具体的には,2粒の種子が1か所に播種される慣行の直播栽培(慣行区)に対し,その種子間隔を10 cmで播種する手法(幅広区)を検討し,それぞれについて2葉期と6葉期に間引きを行った.その結果,間引き作業時間は慣行区で4.7–4.9 s/株,幅広区で2.0–3.1 s/株となり,種子間隔が広いと間引き作業時間が短縮することが分かった.また,種子間隔10 cmでは,6葉期に間引きする方が2葉期に間引きする場合に比べ,間引き作業時間を1.1 s/株短縮できることが分かった.キャベツの生育について,投影葉面積と結球重は間引き作業時期の違いによる有意な影響を受けなかったが,慣行区よりも幅広区の方が生育は良好な傾向を示した.以上のことから,種子間隔を10 cmに設定し6葉期に間引きを行う手法が間引き作業の省力化に適していることが明らかになった.
著者
周 松嬰 鴨田 春菜 篠原 麻希 渡邉 智文 佐藤 達雄 芳野 未央子 前嶋 啓佑 小谷 博光 ウィディアストゥティ アニ 八本 功 鵜沼 光岳 三須 英幸 江口 ゆみ
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.73-79, 2018
被引用文献数
1

トマト養液栽培において養液の電気伝導度(EC)を上昇させることにより,果実糖度の上昇を効率的に行うことができる.海水由来の苦汁と粗塩(NaCl)がEC上昇や果実収量ならびにトマトの品質改善に及ぼす効果を一段ならびに二段栽培で比較した.苦汁は製塩過程で生じる副産物であり利用が簡単で安価に入手することができる.特に苦汁は液体で流通されるため,溶解作業が必要な塩による高EC処理より便利である.春まき夏どり栽培と夏まき秋どり栽培が1回ずつ行われた.第1花房の最も大きい果実が直径4 cmに肥大したときに高EC処理(苦汁または粗塩)を開始した.2回の実験とも,苦汁処理の収量ならびに品質は粗塩処理と同等であった.養液への苦汁の添加後,養液のECは粗塩処理よりも速やかに上昇した.この原因は不明であるが,両者のイオン組成の違いに起因する可能性が考えられた.トマトの生育に対して特に差異は見受けられなかった.以上のことからトマト低段栽培における高糖度化を目的とした苦汁の添加は,実用的,効果的に利用しうると考えられた.
著者
国本 桂範 西川 学
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.75-82, 2008-06-25
参考文献数
11

スクミリンゴガイの水田に入っての拾い取りによる捕獲と,水田内に設置した野菜トラップによる捕獲および水田周囲に設置した野菜トラップによる捕獲について,作業時間,捕獲効率を比較した.貝が少なかった水田を除き,拾い取りによる捕獲の作業時間は,10a当たり2時間以上を要し,最も捕獲量の多かった水田では約536分を要した.しかし,1回の拾い取りでの捕獲効率は全捕獲の68.3%に止まり,稚苗移植水稲での要防除水準まで貝密度を減少させるには複数回の拾い取りが必要であった.これに対し,水田内に設置した野菜トラップでは4回のトラップでの捕獲を行うことで要防除水準以下の密度まで貝を減少させることができ,10a当たりの作業時間は約418分だった.水田周囲に設置した野菜トラップでは小規模な水田では13回のトラップによる捕獲で,要防除水準以下の密度にまで貝を減少させることができた.10a当たりに換算した作業時間は約116分で,この方法により短時間で簡単に貝を捕獲できることが示唆された.
著者
国本 佳範 西川 学
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.75-82, 2008-06-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
11

スクミリンゴガイの水田に入っての拾い取りによる捕獲と,水田内に設置した野菜トラップによる捕獲および水田周囲に設置した野菜トラップによる捕獲について,作業時間,捕獲効率を比較した.貝が少なかった水田を除き,拾い取りによる捕獲の作業時間は,10a当たり2時間以上を要し,最も捕獲量の多かった水田では約536分を要した.しかし,1回の拾い取りでの捕獲効率は全捕獲の68.3%に止まり,稚苗移植水稲での要防除水準まで貝密度を減少させるには複数回の拾い取りが必要であった.これに対し,水田内に設置した野菜トラップでは4回のトラップでの捕獲を行うことで要防除水準以下の密度まで貝を減少させることができ,10a当たりの作業時間は約418分だった.水田周囲に設置した野菜トラップでは小規模な水田では13回のトラップによる捕獲で,要防除水準以下の密度にまで貝を減少させることができた.10a当たりに換算した作業時間は約116分で,この方法により短時間で簡単に貝を捕獲できることが示唆された.
著者
市ノ木山 浩道 竹内 雅己
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-6, 2008
被引用文献数
2

収穫期に達した5.8aのミカン園を用いて,ウンシュウミカンの鳥害に対する牧羊犬(ボーダーコリー種)の防止効果について調査した.園の四周の一辺に張ったワイヤーに長さ1mの鎖で1匹の犬をつなぎ,犬がワイヤーに沿って自由に動き回ることができるようにした場合は,犬に近接したミカン樹列では鳥害が減少する傾向が見られたが,犬から離れた樹列においては鳥害は軽減されなかった.一方,同じミカン園の四周を金網塀で囲み,園内に1匹の犬を放任した場合は,犬は飛来した鳥を執拗に追跡して追い払い,その結果,園全体に亘って鳥害が軽減された.この方法による果実増収効果は1日当たり約17.5kg/aに相当した.これらのことから,ウンシュウミカンの鳥害防止に牧羊犬を活用する場合,犬をつなぎ止めずに園内に放任することが有効であることが示された.ミカン園の面積当たりの犬の最適頭数や,この鳥害防止法がミカン生産地域のすべてのミカン園に広がった場合の鳥害防止効果については,さらに研究が必要である.
著者
竹下 正哲 中西 一弘 高橋 丈博 蓑原 隆 前山 利幸 戸祭 克 益満 ひろみ 後藤 元
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.183-194, 2018
被引用文献数
2

ドリップ灌漑はヨーロッパ,イスラエルなどを中心に世界に普及しているが,日本では全灌漑地の2%でしか使用されていない.その理由は,日本は四季を通じて十分な降雨があるため,露地栽培でドリップ灌漑は必須ではないとみなされてきたためと考えられる.本研究では,降雨が十分にある日本の露地において,ドリップ灌漑を導入することで,ピーマンの単位面積あたり収量を増加させることができるのではないかという仮説を検証した.「ドリップ灌漑の有無」「固形肥料・液体肥料の違い」の2要因を設定し,そのどちらが影響しているか,あるいは交互作用があるかを検証するために,ピーマンを用い,二元配置の分散分析実験を行った.結果は,「固形肥料・液体肥料の違い」に関わらず,ドリップ灌漑をした試験区の方が,ドリップ灌漑をしなかった試験区(天水のみ区)より収量(生重量),乾燥重量,着果数が増加した.とくに収穫量が落ちてくる9,10月の収量が,ドリップ灌漑区で多くなっていた.その差の要因は多頻度灌水にあると考えられ,日本の露地のように十分な降雨がある耕地においても,ドリップ灌漑により毎日定期的に灌水することで,ピーマンの着果数を増やし,収量を増加させることができることが示唆された.
著者
鹿内 健志 南 孝幸 官 森林 上野 正実
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.29-36, 2007-03-15
参考文献数
7
被引用文献数
1 6

沖縄県におけるサトウキビ生産の担い手として設立が推進されたサトウキビ生産法人は,圃場分散と土地生産性の低さの問題を抱えている.サトウキビ生産法人の圃場は広域に分散しており,作業効率が低下し適期作業に大幅な遅れが生じている.また,単収は県の平均単収を下回っているのが現状である.本研究では集積された農地の分散を示す地理的な指標をGISにより解析し,これらの指標と単収との関係を調査し,圃場分散が生産性に及ぼす影響を検討した.分散を表す地理的な指標として周囲圃場面積,事務所からの距離,圃場面積の3つの指標を提案したが,周囲圃場面積と単収については正の相関があり,事務所からの距離と単収については,負の相関があることが示され,圃場分散がサトウキビ収量に影響を及ぼしている可能性があると示唆された.
著者
中山 秀貴
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.195-201, 2010-12-20 (Released:2011-06-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1

トマト施設栽培において,安定的な着果を得るために,花へのホルモン処理は不可欠である.ホルモン処理は果房を機械的に振動させる振動受粉法(接触振動受粉)に比べ省力的であるが,空洞果比率が増加する可能性がある.一方,振動受粉の空洞果比率はホルモン処理に比べ小さいが大きな労働力を要する.筆者は,送風機を用い発生する風によりトマト果房を振動させる新しい振動受粉法(送風振動受粉)を開発した.そこで,送風振動受粉,接触振動受粉,およびホルモン処理実施時における作業時間,着果率,空洞果比率について調査した.着果促進処理に要する株あたりの作業時間は,送風振動受粉,接触振動受粉,ホルモン処理でそれぞれ2.8秒,7.5秒,6.7秒であった.送風振動受粉では週に2回から3回の処理が必要であったが,一方,ホルモン処理では週に1回の処理で十分であった.これらのことから,送風振動受粉の10aあたりの処理作業時間は96ないし82時間と試算され,ホルモン処理とほぼ同等であった.また,送風振動受粉とホルモン処理で作業強度に大きな違いがないことも推察できた.送風振動受粉における着果率はホルモン処理と同等であり,また,空洞果の発生は見られなかった.これらの結果により,送風振動受粉がトマトハウス栽培における安定着果に有効であることが示された.
著者
竹下 正哲 中西 一弘 高橋 丈博 蓑原 隆 前山 利幸 戸祭 克 益満 ひろみ 後藤 元
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.183-194, 2018 (Released:2019-06-20)
参考文献数
50
被引用文献数
2

ドリップ灌漑はヨーロッパ,イスラエルなどを中心に世界に普及しているが,日本では全灌漑地の2%でしか使用されていない.その理由は,日本は四季を通じて十分な降雨があるため,露地栽培でドリップ灌漑は必須ではないとみなされてきたためと考えられる.本研究では,降雨が十分にある日本の露地において,ドリップ灌漑を導入することで,ピーマンの単位面積あたり収量を増加させることができるのではないかという仮説を検証した.「ドリップ灌漑の有無」「固形肥料・液体肥料の違い」の2要因を設定し,そのどちらが影響しているか,あるいは交互作用があるかを検証するために,ピーマンを用い,二元配置の分散分析実験を行った.結果は,「固形肥料・液体肥料の違い」に関わらず,ドリップ灌漑をした試験区の方が,ドリップ灌漑をしなかった試験区(天水のみ区)より収量(生重量),乾燥重量,着果数が増加した.とくに収穫量が落ちてくる9,10月の収量が,ドリップ灌漑区で多くなっていた.その差の要因は多頻度灌水にあると考えられ,日本の露地のように十分な降雨がある耕地においても,ドリップ灌漑により毎日定期的に灌水することで,ピーマンの着果数を増やし,収量を増加させることができることが示唆された.
著者
志藤 博克 積 栄 岡田 俊輔 高橋 圭二 舘山 則義 馬渕 彰二
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.173-182, 2018 (Released:2019-06-20)
参考文献数
20

北海道では牛との接触による負傷事故が年間700件以上も報告されているが,府県では負傷事故調査を行っている自治体が限られていることもあり,問題が顕在化していない.そこで筆者らは9道県40戸の酪農家に聞き取り調査を実施した.その結果,府県でも北海道と同様,繋ぎ飼いでは搾乳時,放し飼いでは牛の移動時に事故が多く,長期入院した事例もある反面,労働力に余裕がないため余程のことでない限り入通院しない実態が明らかになった.事故の要因を分析した結果,繋ぎ飼いでの搾乳中の事故では,牛舎環境や牛の扱い方の改善による牛へのストレス軽減で,牛の危険行動を抑制すると同時に乳量増加や疾病の低減効果が期待でき,放し飼いでの牛の移動中の事故では,施設の改善により人と牛を分離することで事故の低減が期待できること等が示唆された.
著者
アハメド T. 瀧川 具弘 小池 正之 ホサイン M.M. ハック M.M. ハルク M.O.
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.221-236, 2003
被引用文献数
2

バングラディシュにおいて一般的である人力畜力,歩行形トラクタ,四輪トラクタを基幹動力とする四種の機械化体系から,の最適体を系選択するための支援するマルチレイヤーGISモデルを開発した.研究の目的は,1年当たり2回の穀物栽培シーズンを持つバングラディシュにおいて,農作物システムの代替案をエネルギーの観点から比較検討する方法を開発することである.GISモデルにより,検討対象とする機械化体系についてエネルギーの存在量,必要量,不足量を推定できる.これと地域情報をマップに埋め込んだマルチレイヤーモデルに,アベニュー・リクエストや空間解析を加えた結果,バングラディシュの全64州について,エネルギー及び動力の利用可能量,必要量と不足量の分布を示すことができた.
著者
山田 貴代 山下 淳 苗 鉄軍
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.11-19, 2009

本研究は,静的作業における作業者の精神的負担を知ること,作業者の負担を軽減させる休憩の効果を明らかにすること,休憩の際に飲用する市販のカフェイン含有コーヒーの効果を明らかにすることを目的とした.被験者に精神作業負荷を課すため,内田クレペリン検査を使用し,以下の3つの実験を行った.実験1では,短時間の休憩時間(5分間)でも休憩中に飲料を飲用すると,休憩効果の向上がはかれることが分かった.実験2では,休憩時間を20分に延長し,さらにカフェイン含有の有無が休憩効果に及ぼす影響について調査した.正答数,脈拍数およびカオスアトラクタを調べた結果,カフェイン含有コーヒー飲用時の方が休憩の効果が高かった.そこで,実験3では被験者数を38人に増員し,二重盲検法にてカフェインの効果を詳細に調べた.15分間を1ラウンドとし,10ラウンド(計150分)まで作業し,途中(75分)でカフェイン飲料を飲用した.その結果,カフェイン飲用した場合には作業量が多くなることが分かった.平均脈拍数に関してもカフェイン含有コーヒー飲用グループでは低下し,従来のカフェイン効果の研究結果とほぼ同じ傾向を示した.また,各ラウンドの被験者の精神的負担の状況をアトラクタによって確認することができた.<BR>以上,静的作業者にとっても動的作業と同様に休憩は重要であり,休憩の際にカフェイン含有飲料を飲用することによって,より良い作業環境を構築できると示唆された.
著者
冨田 宗樹 水上 智道 高橋 正光 塚本 茂善
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.225-232, 2009-12-20
参考文献数
3
被引用文献数
1