著者
加藤 陽子 Yoko KATO 国際大学日本語プログラム International University of Japan
雑誌
世界の日本語教育. 日本語教育論集 = Japanese language education around the globe ; Japanese language education around the globe (ISSN:09172920)
巻号頁・発行日
no.5, pp.209--224, 1995-04-28

本稿は、用言のテ形(書いて、白くて、静かで、など)で接続されている複文を、従属節の主節に対する依存の程度(従属度)の違いによって分類することを目的とした。その従属度を測定する基準の一つとして、「主節末のモダリティや否定辞のスコープによる複文の構造」という統語的側面 を考察した。これらのスコープを観察することで、複文は、主節末のスコープが主節命題と従属節命題まで及ぶ構造(α構造)と、主節末のスコープが主節の命題のみにしか及ばない構造(β構造)に分けられた。本稿では、このα・βの構造の違いが、従属度を反映し、分類の統語的基準になると考えた。また、従属度を測定するもう一つの基準として、「節間の関係的意味を成立させる要素」という意味的な側面 を考えた。この要素は、(1)従属節の、複文全体における命題形成の機能、(2)主節・従属節間の論理関係、(3)主節・従属節間の時間・順序関係、(4)主節・従属節の述語の主語の異同、の四つである。本稿では、これらの要素が相互に関連しながら緊密に節同士が関係しあって複文を構成するものを従属度の高いテ形、これらの要素間にあまり関係がなく、節間の緊密な関係もみられないものを従属度の低いテ形、とした。この二つの基準から、テ形節は、テ1(付帯状況)、テ2(継起的動作)、テ3(原因・理由)、テ4(並列)、テ5(発言のモダリティ成分)に分類され、テ1からテ5の順番で、従属度が低くなっていくことを述べた。