著者
吉岡 大樹 河野 祐輔 福田 富滋余 碇 秀樹 國崎 忠臣
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.301-304, 2008 (Released:2008-06-30)
参考文献数
16

【目的】モルヒネ投与により, 排便コントロールが困難な患者に対してミソプロストールを投与したところ, 排便状態の改善が得られた症例を経験した. 【症例】70歳代, 男性, 膀胱がん術後再発, 右骨盤転移. 右骨盤の疼痛に対して, 放射線治療および硫酸モルヒネ徐放剤の投与で安静時の疼痛緩和が得られた. モルヒネ投与による排便困難と腹部膨満の症状があり, 複数の緩下剤を併用投与しても高度便秘と水様便を交互に繰り返すという状態が続いていた. ミソプロストール800μg/日を投与したところ, 定期的な自力排便がみられるなどの排便状態の改善が得られた. 【考察】ミソプロストールは小腸の蠕動運動を亢進させ, 水およびナトリウムの吸収を阻害する. 本症例は, この作用機序により排便状態の改善が得られたと考えられる. ミソプロストールはオピオイド投与による難治性の便秘に対する治療薬の選択肢の1つとして有用であると考える. Palliat Care Res 2008:3(1);301-304
著者
森野 茂行 重政 有 羽田野 和彦 碇 秀樹 清水 輝久 菅村 洋治 國崎 忠臣 米満 伸久
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.1693-1697, 2002-11-01
参考文献数
11
被引用文献数
9

症例は23歳の女性.平成13年7月4日より腹痛嘔吐が出現し7月7日当院を受診した.触診上,左下腹部に圧痛を伴った鶏卵大腫瘤を触知した.腹部エコー,CT検査において左下腹部にターゲットサインを認め,また上部小腸の拡張を認めた.小腸重積症の診断で高圧注腸を試みたが,整復が困難であったため緊急手術を行った.回腸末端部より90cm口側の回腸が約15cmにわたって重積を起こしており,約40cmの回腸を切除した.重積回腸先進部の粘膜面に径約3cmの腫瘍を認めた.病理組織学的には,粘膜下組織と筋層内に平滑筋組織と混在する導管構造を認め,迷入膵Heinrich分類III型と診断した.迷入膵は胃,十二指腸,空腸などの膵の近傍に好発する疾患で,回腸に発生することは比較的まれである.回腸迷入膵は腸重積を引き起こし発症することが多く,高圧注腸による整復が困難で腸切除を余儀なくされることが多い.発生部位は回腸末端部より100cmまでの下部回腸に好発する.