著者
高野 昇 吉田 哲夫 園田 俊雄 桧垣 康二
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.p559-566, 1980-05

不妊症における卵管性不妊因子診断の向上ならびに適切な治療指針を得るため,卵管形成術症例のhystrosalpingography(HSG)像にみられる卵管陰影を分析し,その病理組織学的所見との比較検討を行なった.1年以上術後経過を観察することのできた91例の卵管形成術例を対象とし,HSG像については,テレビ観察のもと造影剤注入卵管陰影確認直後,造影剤追加注入腹膜陰影確認直後,つづいて側面像,さらに造影剤注入終了5分後の4枚撮影により検討を加えた.卵管の一部を採取する機会のあった症例については光学顕微鏡ならびに走査型電子顕微鏡標本を作製L,これらの所見とHSG像とを対比した.91例140卵管中73卵管52.1%に1年以上の疎通性回復を認め,16例17.6%に妊娠の成立をみた.卵管陰影の走行方向(位置),走行形態に異常のみられる例では,癒着,子宮内膜症あるいは腫瘤の存在する傾向がみられ,卵管陰影自体に異常を認める場合,高頻度に病理組織学的に変化がみられた.現在までの観察結果では妊娠例の術後HSG像ならびに一病理組織像は全例正常生理的範囲と考えられる所見を示している.