著者
河崎 純忠 阿部 伊知郎
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.299-307, 2007-07-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
21
被引用文献数
5 4

集中治療室に入室したがん患者586名を対象に, 患者背景, ICUの転帰, ICU退室後生存時間, 死因を調査し, 多変量解析を用いてICU死亡とICU退室後予後に関わる独立予後予測因子を得た。ICU退室後予後の解析では, 退室後1ヶ月間, 3ヶ月間, 6ヶ月間, 1年間, 3年間, 5年間の各観察期間の予後予測因子を求めて, 予後予測因子におよぼす観察期間の影響について検討した。ICU死亡率は30%, ICU死亡に関わる予後予測因子は脳腫瘍, 中枢神経障害, Acute Physiology and Chronic Health Evaluation II (APACHE II) スコア, 不全臓器数, 敗血症であった。ICU退室後の予後予測因子は, 癌腫の臨床病期, 呼吸不全, 肝不全, 腎不全, APACHE IIスコア, 肺がんであったが, 病期が一貫して退室後予後に影響したのに対し, 集中治療項目の予後への影響は退室後1年で, 予後予測因子となる項目が時間経過と共に変化した。がん患者の集中治療とは, 進行がんや難治がんに対するがん治療の合併症を治療することといえる。