著者
数井 みゆき 無藤 隆 園田 菜摘
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.31-40, 1996-08-01 (Released:2017-07-20)
被引用文献数
9

本研究の目的は, 子どもの発達を家族システム的に検討することである。家族システムの3変数として, 子どもの愛着, 母親の認知する夫婦関係, 母親の育児ストレスをとりあげている。対象者は, 48組の母子で, 子どもの平均年齢は3.4歳であった。子の愛着の安定性には, 夫婦関係の調和性と親役割からのストレスとが関連していた。特にこの2つの変数の交互作用の要因が有意で, 親役割からのストレスが高くかつ夫婦関係が調和的でないときに, その子の愛着がもっとも不安定に予測された。また, 社会的サポートは親役割ストレスを低くする方向で関連していた。さらに, 家族関係の機能度という視点より, 柔軟性が適度に保たれている家族は, 家族システム的にも良好であった。母親の心理的状態や子どもへの行動・態度は, 夫との関係のありようと密接に関連しているという結果であり, 子どもの心理的状態を研究する上で母親ばかりではなく父親(夫)との相互作用・関係を考慮にいれなければならないことを示唆した。
著者
園田 菜摘
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.177-188, 1999-12-31

3歳児が示す他者の欲求, 感情, 信念理解の個人差について, その特徴と母子相互作用との関連を検討した。51組の母子の相互作用を家庭で観察し, ごっこ遊び場面と本読み場面における内的状態への言及頻度をカウントした。その後, 子どもに欲求, 感情, 信念理解を調べる課題を行った。その結果, 3歳児の他者理解の特徴として, 全体的には感情理解の成績が高く, 信念理解の成績が低いが, どの課題においてもそれぞれ大きな個人差が存在していることが示された。このような他者理解の個人差と関連する柏互作用要因について, 欲求理解では母親の本読み場面での思考状態への言及とごっこ遊び場面での応答的な内的状態への言及との問で, 信念理解については母親の両場面での思考状態への言及, ごっこ遊び場面での応答的な言及, 本読み場面での繰り返し的な言及との問で, それぞれ関連があることが示された。さらに, 子どもの月齢や性別, きょうだい数といった柏互作用以外の要因と他者理解との問にはほとんど関連が見られなかった。このことから, 3歳児の他者理解を促す要因として, 家庭での相互作用, 特に場面に応じた内的状態への言及の重要性が示唆された。