著者
阪 龍太 長谷川 利路 園部 宏
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.85-88, 2010 (Released:2011-02-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1 3

Human tailは,出生時から認められることの多い尾様の突起である.Human tailは腰部から臀部にかけて発生するが,仙尾部に認められることが多く,肛門周囲に発生することは稀である.今回,われわれは,肛門縁に発生したhuman tailの1例を経験したので報告する.症例は2カ月の男児で,出生時より肛門縁に尾様の突起を認めていた.明らかな他の合併奇形はみられず,腫瘤切除を行った.病理組織学的には大部分が脂肪組織より成り,平滑筋成分の増生,索状の横紋筋・神経線維を認めた.本症例はHarrison分類ではcaudal appendageに,Dao分類およびLin分類ではtrue tailに分類される.
著者
小林 誠 北川 隆夫 藤下 雅敏 吉本 静雄 久保西 一郎 新谷 憲治 田口 博国 三好 勇夫 園部 宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.1384-1390, 1983
被引用文献数
2

Pneumocystis carinii(Pc)肺炎は専ら免疫不全状態にある患者に発症する.最近CMV感染あるいは麻薬の常用が,同性愛の男性の免疫不全の原因となる可能性が指摘されている.我々は異常な性習慣や麻薬歴のない健康成人女性に発症したPc肺炎の1例を報告する.症例は37才の女性で,主訴は労作時呼吸困難.両側性びまん性胸部陰影の精査のため入院した.患者は10年間縫製業に従事しており,入院5ヵ月前の胸部X線像は正常であつた.入院第10病日に高熱が出没するようになり,次第に低酸素血症と胸部陰影が増強したため,経気管支肺生検を施行した.メテナミン銀染色で肺胞腔内に充満するPcの虫体を認めたので, TMP-SMZの内服を開始した.投与後5日目に下熱し,その後8週間で胸部陰影は全く消失し, Po<sub>2</sub>も正常化した.入院後間もなく患者は腋窩部と下腹部を中心に疥癬に罹患していることが判明し,皮膚病変は成人ではまれとされる皮下トンネルの形成が著明であつた.血清学的にCMVに対する抗体は陰性で,末梢血リンパ球数, T細胞数, B細胞数, PHAとPWMに対するリンパ球幼若化反応,末梢血単球と好中球の貧食能,免疫globulin値はすべて正常であつたが, PPD皮内反応は陰性であつた.細胞性ならびに液性免疫能が正常でかつ基礎疾患のない婦人にPc肺炎が発症した理由は明らかでないが,トンネル形成が著明な疥癬が合併したことを考えると,本例に何らかの免疫不全が存在したことは否定できない.