著者
藤原 勇太 岸本 朋宗 平林 政人 土井 克史
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-24, 2017-01-15 (Released:2017-02-15)
参考文献数
10

症例は83歳の男性で,盲腸腫瘍の診断にて腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術が予定された.既往に両側緑内障があり,右眼は失明していた.麻酔導入はフェンタニル200μg,プロポフォール50mg,ロクロニウム40mgで急速導入し,経口挿管を行った.その後,経鼻胃管を鼻腔内に挿入すると心拍数50/minから15/minへと高度の徐脈となり,挿入操作中止すると心拍数42/minに回復した.本症例では三叉神経-心臓反射(trigemino-cardiac reflex:TCR)の可能性が考えられた.経鼻胃管挿入時には,TCRにより徐脈をきたす可能性があることを念頭に置くことが重要である.
著者
土井 克史
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.376-380, 2013 (Released:2013-07-13)
参考文献数
20

硬膜外麻酔を代表とする区域麻酔は,手術侵襲に伴うストレス反応を抑制することにより,さまざまな利点を有すると以前より報告されている.近年でも全身麻酔のみと比べて,呼吸器系合併症,手術創の感染,深部静脈血栓症などの軽減に有効と報告されている.このため手術後の死亡率を減少させる可能性もある.また最近では,区域麻酔が悪性腫瘍の術後の再発や転移に与える影響について注目が集まっている.乳がん手術における傍脊椎ブロックがその再発や転移を減少させるという報告に始まり,大腸・前立腺・腹部がんなどでの検討があるが,いまだ一定の見解を得ていない.