著者
藤原 勇太 岸本 朋宗 平林 政人 土井 克史
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-24, 2017-01-15 (Released:2017-02-15)
参考文献数
10

症例は83歳の男性で,盲腸腫瘍の診断にて腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術が予定された.既往に両側緑内障があり,右眼は失明していた.麻酔導入はフェンタニル200μg,プロポフォール50mg,ロクロニウム40mgで急速導入し,経口挿管を行った.その後,経鼻胃管を鼻腔内に挿入すると心拍数50/minから15/minへと高度の徐脈となり,挿入操作中止すると心拍数42/minに回復した.本症例では三叉神経-心臓反射(trigemino-cardiac reflex:TCR)の可能性が考えられた.経鼻胃管挿入時には,TCRにより徐脈をきたす可能性があることを念頭に置くことが重要である.
著者
辻 将大 秋山 恭彦 杉本 圭司 上村 岳士 内村 昌裕 藤原 勇太 宮嵜 健史 永井 秀政
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.375-380, 2017 (Released:2017-09-25)
参考文献数
20

症例は66 歳の女性.30 秒~1 分間程度持続する一過性の右上肢脱力発作を繰り返し発症した.脳血管撮影により頸部頸動脈解離の診断に至った.患者には,約1 カ月前に頸部への鈍的外傷歴があった.急性期の脳虚血巣はMRI では認められず,MRI および造影CT において解離病変部内に明らかな血栓が同定できないこと,非脳虚血発作時の脳血流検査で脳血流低下や脳血流予備能低下も認められないことから,当初,脳虚血発作の発症機序を特定できなかった.血管内視鏡による病変部観察の結果,解離した血管壁が可動性を有するフラップ形状を呈しており,偽腔内へ流入する血流により解離フラップが血管腔を閉塞するように上昇運動する状態が観察されたことから,解離血管壁が間歇的に血管腔を閉鎖することが本症例の病態生理と推測された.頸動脈ステント留置術により解離血管壁を固定した結果,脳虚血症状は消失した.
著者
秋山 恭彦 宮嵜 健史 萩原 伸哉 中右 博也 神原 瑞樹 吉金 努 辻 将大 藤原 勇太 内村 昌裕 永井 秀政
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.10, pp.728-737, 2017 (Released:2017-10-25)
参考文献数
32

頚動脈ステント留置術は, 全身性動脈疾患であるアテローム性動脈硬化症に対し, 頚部局所のアテロームを制御する治療で, 低侵襲であるために, 周術期の心筋梗塞をはじめとする全身性合併症を低く抑えることが可能である. しかし, 治療本来の目的は脳梗塞予防であるため, 現行の治療は, 周術期の脳虚血イベントを十分に制御できているとはいえない. 本稿では, これまでの頚動脈ステント留置術と頚動脈内膜剝離術のランダム化比較試験および, そのサブ解析の結果を概説し, 本治療法の現状と課題を周術期脳虚血合併症に焦点をあて整理し, 次世代への治療の進歩を探る.