著者
岩瀬 昭雄 土井 希祐 佐久間 哲哉 吉久 光一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、積雪面上の音響特性を実測調査することを研究の基盤と考え、新潟県南蒲原群下田村において1998年1月と1999年1月の2回に渡り、約50cmと1mの積雪を対象として音響伝搬特性、積雪面の吸音率さらに、積雪中における音響伝搬特性など積雪の音響特性を規定する諸特性の計測実験を行った。積雪面上の2つの音響実験では、自然積雪とカンジキで踏んだ圧雪条件、音源高さとして低い0.3mや1.5mの場合に加え、約4mや6mの場合の伝搬実験も行った。その結果として、積雪面上で肉声で会話することを想定すると、音声帯域(250Hz〜500Hz)は非常に音波が伝わり難いことがわかった。スピーカによる拡声を想定して音源の高さを高く配置した場合の音響伝搬特性は、音声の帯域での幅広い減衰は無くなり全般的に改善されるが、激しい凹凸の含まれる音響伝搬特性であることも判明した。また、積雪条件が整わない春季から秋季の期間には積雪の音響的なアナロジーに着目し、多孔質材料を雪に見立てた1/50縮尺模型実験を実施した。すなわち、1998年度に作製した高電圧発生回路を利用し、放電超音波パルス音源を用い、この音源からの放射音を音源高さと受音点までの距離の組み合わせを様々変えて音響伝搬周波数特性をFFT分析器により観測した。前年度に得られている積雪面上での音響伝搬特性の実測結果の再現を試み、積雪面に対応する構造として目の粗いジュート麻と目の細かいタオル地を重ねて対応可能なことがわかった。また、畳込みによる可聴化による聴取試験でも上記の周波数依存性が確認された。また、積雪の基本的な音響物性値である衰減定数と位相定数も観測でき、単位厚さ当たりのdB減衰値の周波数依存性や低周波で音速が遅く、周波数が高くなるに従って音速が増し、空気中の音速に近づくなどの多孔質材料としての特性が確認された。