著者
松井 温子 佐久間 哲哉
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.26, no.62, pp.169-172, 2020-02-20 (Released:2020-02-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1

Hyperacusis, that is, unusual intolerance to ordinary environmental sounds, poses a health risk to a certain number of ordinary people. In particular, developmental disorders tend to have hyperacusis, but their difficulties in daily life are not socially recognized. In this paper, a questionnaire survey on hyperacusis for developmental disorders is carried out, and the actual conditions, what kinds of sound and situation cause the symptom, are figured out.
著者
岩瀬 昭雄 土井 希祐 佐久間 哲哉 吉久 光一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、積雪面上の音響特性を実測調査することを研究の基盤と考え、新潟県南蒲原群下田村において1998年1月と1999年1月の2回に渡り、約50cmと1mの積雪を対象として音響伝搬特性、積雪面の吸音率さらに、積雪中における音響伝搬特性など積雪の音響特性を規定する諸特性の計測実験を行った。積雪面上の2つの音響実験では、自然積雪とカンジキで踏んだ圧雪条件、音源高さとして低い0.3mや1.5mの場合に加え、約4mや6mの場合の伝搬実験も行った。その結果として、積雪面上で肉声で会話することを想定すると、音声帯域(250Hz〜500Hz)は非常に音波が伝わり難いことがわかった。スピーカによる拡声を想定して音源の高さを高く配置した場合の音響伝搬特性は、音声の帯域での幅広い減衰は無くなり全般的に改善されるが、激しい凹凸の含まれる音響伝搬特性であることも判明した。また、積雪条件が整わない春季から秋季の期間には積雪の音響的なアナロジーに着目し、多孔質材料を雪に見立てた1/50縮尺模型実験を実施した。すなわち、1998年度に作製した高電圧発生回路を利用し、放電超音波パルス音源を用い、この音源からの放射音を音源高さと受音点までの距離の組み合わせを様々変えて音響伝搬周波数特性をFFT分析器により観測した。前年度に得られている積雪面上での音響伝搬特性の実測結果の再現を試み、積雪面に対応する構造として目の粗いジュート麻と目の細かいタオル地を重ねて対応可能なことがわかった。また、畳込みによる可聴化による聴取試験でも上記の周波数依存性が確認された。また、積雪の基本的な音響物性値である衰減定数と位相定数も観測でき、単位厚さ当たりのdB減衰値の周波数依存性や低周波で音速が遅く、周波数が高くなるに従って音速が増し、空気中の音速に近づくなどの多孔質材料としての特性が確認された。
著者
佐久間 哲哉 岩瀬 昭雄 安岡 正人
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.63, no.505, pp.1-8, 1998
参考文献数
15
被引用文献数
5

1.はじめに 現在,建材としての膜材の利用形態は多岐に渡り,その音響的利用例も少なくない。膜材の音響特性に関して無限大膜モデルに基づく理論解析1)2)3)により吸音率・透過損失の予測が行われる一方,任意音場の波動音響学的予測を目的とした音響-膜振動連成数値解析手法4)5)が検討されている。本論文では,膜材が建材として使用される場合の大半において音場に及ぼす膜の張力の影響が微小であることに着目し,張力0を仮定した無張力膜モデルに基づき,FEM音場解析における無張力膜要素を提案する。無張力膜要素を用いた解析では膜振動場に対する数値解析手法の適用が不要なことから,張力を考慮した厳密な連成解析に比べて計算に要する記憶容量・時間が大幅に低減する。さらに,無張力膜要素は従来の空気要素・吸音要素と節点音圧未知量のみを介して接続されることから,その取扱いが簡便であると同時に,更なる記憶容量・時間の低減が図られる。本方法は音響管内の理想音場における数値解と理論解との比較によりその妥当性が検討された後,室内音場への適用例として,非通気性膜を有する室内の固有周波数解析,膜を含む多層吸音構造体を有する室内の伝送特性解析を行い,模型実験との比較からその有効性を検討する。さらに,吸音構造体表面において局所作用を仮定する従来の方法との比較検討についても行う。2.無張力膜要素の理諭的導出 厚さ0・張力0および面密度・流れ抵抗を有する無張力膜モデルを想定し,膜振動方程式,流れ抵抗に関する定義式および新たに定義した膜の実効面密度により膜面上音圧と粒子速度の関係を定式化する。次に,膜と多孔質材を含む室内音場を想定し,Galerkin法の適用により積分方程式を導出した後,前述した関係式の代入および変形により膜面の寄与を膜面上粒子速度を含まない形式で表す。ここで,膜面上の節点を膜両面で対を成すように同一座標に配置し,その節点対から構成される膜部分を一種の有限要素(以下,無張力膜要素)とみなすことにより,膜両面の寄与を無張力膜要素の寄与として取り扱うものとする。3.FEMによる解析方法 空気要素・吸音要素・無張力膜要素の3種類の要素を用いて解析領域の要素分割を行い,全体マトリクス方程式を構成する。ここで,全体マトリクス方程式は膜に関する無張力膜マトリクスが従来のマトリクス方程式に加わる形式で表され,その無張力膜マトリクスは面密度に関する実数部と流れ抵抗に関する虚数部から成る。無張力膜要素の適用により膜面上粒子速度に関する適合手続きが不要なことから,各全体マトリクスは各要素マトリクスの単純な重ね合わせにより組み立てられる他,膜面上粒子速度に関する節点未知量の排除および効率的なバンドマトリクスの生成により記憶容量・時間が低減される。無張力膜要素の取扱いに関しては,要素内の膜面位置・節点対に関する情報を予め要素内節点番号の配列に付与し,各節点の内挿関数は空気要素・吸音要素と同様の内挿関数を形式的に用いることができる。4.解析方法の適用と考察 剛壁からなる音響管内に膜と多孔質材を設置した1次元的理想音場を想定し,端部振動面の比放射インピーダンスに関して数値解と理論解の比較を行った。両者は低周波数域でほぼ完全に一致したことから,本方法の妥当性が確認された。さらに,膜が音響管内音場に及ぼす影響を調べた結果,膜面における音圧分布の不連続性,膜の設置による音圧分布の変化が確認された。次に,室内音場への第一の適用例として,非通気性膜を設置した模型室内の固有周波数解析を行い,模型実験との比較検討を行った。膜の設置による室内固有周波数低下の割合に関しては計算値の方が実測値よりやや高い割合を示すものの,膜が室内固有周波数に及ぼす影響の全般的傾向という点では実測結果と計算結果の良好な対応が見られた。従って,膜を有する室内の固有周波数予測に本方法は有効であることが認められた。室内音場への第二の適用例として,膜・グラスウール・空気層から成る多層吸音構造体を有する室内の伝送特性解析を行い,模型実験との比較検討を行った。種々の吸音構造体条件における受音点音圧の周波数応答に関して実測結果と計算結果は良好な対応を示したことから,吸音構造体を有する室内の音場予測に本方法は有効であることが認められた。さらに,吸音構造体表面において局所作用を仮定する従来の方法との比較検討を行った結果,局所作用を仮定する方法によると厚い吸音構造体では大きく予測精度が低下し,今回提案する方法が計算精度においてかなり優位であることが示された。5.まとめ 室内音場のFEM解析における膜材の取扱い方法として,膜の張力0を仮定し,面密度・通気性を考慮する無張力膜モデルに基づく新種の無張力膜要素を提案した。FEM音場解析における無張力膜要素の具体的な取扱い方法が述べられ,取扱いの簡便さ,適用による数値計算の効率化が示された。理論解が得られる音響管内音場への適用から本方法の妥当性が確認され,模型室内音場への適用から膜を有する室内の固有周波数予測,膜を含む多層吸音構造体を有する室内の音場予測における有効性が認められた。さらに,吸音構造体の取扱いに関しては局所作用を仮定する方法による予測精度の低下を指摘し,本方法の優位性が明らかにされた。