- 著者
-
片山 俊之
土居内 龍
西山 雅人
- 出版者
- 中央水産研究所
- 雑誌
- 黒潮の資源海洋研究 = Fisheries biology and oceanography in the Kuroshio (ISSN:13455389)
- 巻号頁・発行日
- no.12, pp.85-89, 2011-03
紀伊半島南西岸産のイサキについては,生殖腺の組織学的観察によると産卵期が5~8月であり,雌は1歳では成熟せず,2歳から全個体が成熟し,雄は1歳で全個体が成熟することがわかっている(土居内・吉本 2009)。今回の調査において,和歌山県でのGIのピークは雌雄ともに5月だった。ただし,産卵が活発化する時期はGIのピーク時ではなく,GIがピークを示した次の月であるものと推察されている(土居内・吉本 2009)。大分県では5月以前のデータがないものの,GIのピークが雌雄ともに6月であり,神奈川県ではイサキの産卵期は6~8月とされている(増沢1968)。これより,イサキの産卵期については調査各県沿岸海域において大きな差はみられないことが明らかとなった。イサキの年齢と成長については各県で調査されており,神奈川県では鱗による年齢査定から,lt=32.9[1-exp-O.31(t+0.496)](lt:t歳におけるFL,t:年齢)という成長式が得られている(増沢1967)。和歌山県では耳石横断切片による年齢査定から,lt=331[1-exp{-0.283(t+1.45,)],(r2=0.915),の成長式が得られており,年齢の範囲は雄で0~21歳,雌で0~15歳である(Doiuchi et al. 2007)。大分県では,豊後水道西武海域で漁獲された個体の耳石横断切片による年齢査定から,lt=319.7[1-exp{-0.672(t+0.183)}]という成長式が得られており,年齢の範囲は雄で0~23歳,雌で0~17歳であることが明らかとされている(山田・片山2007)。これを基にすると,神奈川県では2歳以下の個体を主に漁獲していることになる。和歌山県では2~4歳魚が漁獲の主体である。大分県では2~4歳魚が漁獲の主体である。なお,鱗による年齢査定は耳石横断切片よりも過小評価になる場合があるため,神奈川県の漁獲物を和歌山県と大分県で得られている成長式に当てはめると,やはり2歳以下が漁獲の主体と判断された。