著者
加藤 正人 内山 雅史 岡本 隆
出版者
中央水産研究所
雑誌
黒潮の資源海洋研究 = Fisheries biology and oceanography in the Kuroshio (ISSN:13455389)
巻号頁・発行日
no.4, pp.45-49, 2003-02

ハリセンボンは、浅海の珊瑚礁や岩礁域に生息し、津軽海峡以南の日本海沿岸、相模湾以南の太平洋岸に分布する。日本近海では南西諸島や台湾付近で産卵し、稚魚は黒潮域や対馬暖流域に出現するといわれている。房総半島沿岸では普段目にすることは希で、漁業の混獲物としてもほとんど出現しない。ところが、2002年1月、房総沿岸の定置網にハリセンボンが大量に入網し、以後4月頃まで断続的に入網が続いた。このような暖海性種の特異的な大量来遊の記録は、漁海況の変動やその要因を明らかにする上で、有益な情報になると考えられる。そこで、千葉県各定置網での入網状況と入網したハリセンボンの大きさ、他県における来遊状況を整理したので報告する。
著者
高橋 正知 高木 香織 川端 淳 渡邊 千夏子 西田 宏 山下 紀生 森 賢 巣山 哲 中神 正康 上野 康弘 斉藤 真美
出版者
中央水産研究所
雑誌
黒潮の資源海洋研究 = Fisheries biology and oceanography in the Kuroshio (ISSN:13455389)
巻号頁・発行日
no.11, pp.49-54, 2010-03

マサバおよびゴマサバの資源研究において、加入量およびその加入機構を解明することは重要であるが、仔稚魚を含む加入以前の個体についての知見は乏しいのが現状である。マサバ、ゴマサバ太平洋系群の当歳魚は、本邦太平洋南岸で発生し、黒潮に移送されて黒潮親潮移行域に広く分散、北上し、その後、道東~千島列島沖合域で索餌、成長後、本邦近海に南下して資源に加入するものと考えられている。そこで本研究では、2007年5~7月の北上期および2007年9~10月の索餌期に行われた調査船調査からさば類当歳魚の分布を明らかにし、得られた標本を用いて、日齢解析により稚魚~幼魚期の成長様式および孵化時期の推定を行うことを目的とした。
著者
梨田 一也 岡田 誠
出版者
中央水産研究所
雑誌
黒潮の資源海洋研究 = Fisheries biology and oceanography in the Kuroshio (ISSN:13455389)
巻号頁・発行日
no.15, pp.57-62, 2014-03

ゴマサバScomber australasicusは北海道南部以南~西部太平洋~オーストラリア南部,ニュージーランド,ハワイ諸島およびメキシコ沖に分布し(Nakabo 2002),同属のマサバS. japonicusとともに本邦太平洋側における重要な水産資源である(川端他 2014)。ゴマサバ太平洋系群には,東シナ海~黒潮続流域から東北~北海道海域を大規模に回避する群れ(広域回遊群)のほか,黒潮周辺の沿岸域に周年分布する群れ(沿岸分布群)も多く(川端他 2014),さまざまな生活型に由来する複雑な年齢-体長関係が想定される。したがって,ゴマサバ太平洋系群に対する適切な資源管理の実行には,それぞれの生活型を踏まえた解析が望ましく,季節ごと,海域ごとの年齢-体長関係の把握が必要である。さば類の鱗による年齢査定については,比較的多くの知見が得られているが(例えば近藤・黒田 1966,花井 1999,渡邊他 2002),熊野灘以西で多いことが推測される沿岸分布群のゴマサバについての情報は十分とはいえず,熊野灘においては年齢査定に関する知見はない。また,熊野灘のゴマサバは広域回遊を行わない沿岸分布群が漁獲の主体とみられるものの,近年では広域回遊群の来遊も示唆されることから(岡田 2011),特に熊野灘における年齢査定は重要であり,かつ慎重を期する必要がある。近藤・黒田(1966)は過去のさば類の年齢査定に関する研究を総説的に紹介し,さば類の年齢査定法に関する教科書的な論文となっている。しかしながら,鱗を用いた年齢査定の具体的な方法については断片的な記述にとどまっており,初めてさば類の鱗を用いて年齢査定を行いたいと考える研究者にとっては,より詳細な年齢査定の基準や再生鱗の判別,偽年輪の判定などの具体的なマニュアルが望まれている。また一方では,年齢査定を行う各県の水産試験場等の研究者は異動頻度が高く,年齢査定のノウハウが継承されない場合が多いため,継承性をいかに確保するかも課題となっている。そこで,本報告では熊野灘で漁獲されたゴマサバの鱗を用いて,年齢査定を行う手順について標準的なマニュアルを作成すること,および熊野離における年齢査定上の注意点を整理することを目的とした。本報告が,これからゴマサバの年齢査定を行う研究者に参考になれば幸いである。
著者
片山 俊之 土居内 龍 西山 雅人
出版者
中央水産研究所
雑誌
黒潮の資源海洋研究 = Fisheries biology and oceanography in the Kuroshio (ISSN:13455389)
巻号頁・発行日
no.12, pp.85-89, 2011-03

紀伊半島南西岸産のイサキについては,生殖腺の組織学的観察によると産卵期が5~8月であり,雌は1歳では成熟せず,2歳から全個体が成熟し,雄は1歳で全個体が成熟することがわかっている(土居内・吉本 2009)。今回の調査において,和歌山県でのGIのピークは雌雄ともに5月だった。ただし,産卵が活発化する時期はGIのピーク時ではなく,GIがピークを示した次の月であるものと推察されている(土居内・吉本 2009)。大分県では5月以前のデータがないものの,GIのピークが雌雄ともに6月であり,神奈川県ではイサキの産卵期は6~8月とされている(増沢1968)。これより,イサキの産卵期については調査各県沿岸海域において大きな差はみられないことが明らかとなった。イサキの年齢と成長については各県で調査されており,神奈川県では鱗による年齢査定から,lt=32.9[1-exp-O.31(t+0.496)](lt:t歳におけるFL,t:年齢)という成長式が得られている(増沢1967)。和歌山県では耳石横断切片による年齢査定から,lt=331[1-exp{-0.283(t+1.45,)],(r2=0.915),の成長式が得られており,年齢の範囲は雄で0~21歳,雌で0~15歳である(Doiuchi et al. 2007)。大分県では,豊後水道西武海域で漁獲された個体の耳石横断切片による年齢査定から,lt=319.7[1-exp{-0.672(t+0.183)}]という成長式が得られており,年齢の範囲は雄で0~23歳,雌で0~17歳であることが明らかとされている(山田・片山2007)。これを基にすると,神奈川県では2歳以下の個体を主に漁獲していることになる。和歌山県では2~4歳魚が漁獲の主体である。大分県では2~4歳魚が漁獲の主体である。なお,鱗による年齢査定は耳石横断切片よりも過小評価になる場合があるため,神奈川県の漁獲物を和歌山県と大分県で得られている成長式に当てはめると,やはり2歳以下が漁獲の主体と判断された。