著者
土屋 深優
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.160-176, 2022-09-01 (Released:2022-10-01)

本研究はアイデアストアを事例として,社会的包摂概念に基づく公共図書館再編の意義と再編後の変化の検討を目的とする。研究方法として文献調査とインタビュー調査を用いた。調査の結果,アイデアストアは地域住民の社会的包摂を目的として,住民の要望が反映された図書館再編を実施したことが明らかとなった。再編後,図書館への訪問数が増加し,社会的包摂サービスの前提となる来館と図書館サービス認知の効果が示された。再編後も,アイデアストアは地域の実態に合わせて,サービスの内容を継続的に改善していることも明らかとなった。
著者
土屋 深優
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.87-103, 2021

<p> 本研究の目的は,社会的包摂の視点からコミュニティ図書館の意義と取り組みを明らかにすることである。研究方法として文献調査とロンドンのコミュニティ図書館6 館の運営責任者へのインタビュー調査を用い,社会的包摂の視点から考察を行った。調査の結果,コミュニティ図書館には社会的包摂概念が十分に浸透していることが明らかとなった。コミュニティ図書館は地域の閉館した図書館を維持することで,住民の情報,娯楽,文化へのアクセスを保障しており,具体的な取り組みとして,図書館を「場」とした人々の交流を促進し,孤立感の緩和に取り組んでいる。更に,従来は主に「包摂に取り組む側」として捉えられていたボランティア職員を,運営責任者は「包摂する側であり,される側である」と位置付けていた。それゆえコミュニティ図書館ではボランティア職員のスキルやコミュニケーション能力の向上,就労支援に意識的に取り組んでいることが明らかとなった。</p>