- 著者
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作見 邦彦
土本 大介
中別府 雄作
- 出版者
- 学研メディカル秀潤社
- 雑誌
- 細胞工学 (ISSN:02873796)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.2, pp.175-180, 2012-01-22
細胞内で最も豊富なヌクレオチドはATPである.ATPはRNAポリメラーゼの基質として利用されるだけでなく,エネルギーの貯蔵と伝達,シグナル伝達のメディエーター分子,リン酸基供与体,補酵素など様々な細胞機能に必須の分子である.細胞が活性酸素(ROS)や活性窒素(RNS)による様々なストレスに曝されるとヌクレオチドは酸化や脱アミノ化,ハロゲン化など多様な化学修飾を受けることが知られている.通常,ATPの脱アミノ化で生成されるイノシン三リン酸(ITP)は正常な細胞内ではまったく検出されない.しかし,ITPをイノシン一リン酸(IMP)に分解するイノシン三リン酸分解酵素(ITPase)を欠損したマウスの解析から,ITPとdATPの脱アミノ化体であるデオキシイノシン三リン酸(dITP)は常に生体内で生成されており,ITPaseによって分解されないと,心機能不全や細胞増殖阻害など様々な生体障害の原因となることが明らかになってきた.生体内におけるATPやdATPの脱アミノ化反応は,一酸化窒素(NO)由来の無水亜硝酸(N2O3)によるアデニン塩基のN6位のニトロソ化を介して起こると考えられる.